研究課題/領域番号 |
25620073
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50217428)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不斉合成 / 触媒 / 有機塩基 / 物質変換 / 環境調和 / 反応場 |
研究実績の概要 |
環境への負荷軽減を目的とした有機変換反応の高効率化と高選択性を実現する上で、機能性を高めた新規触媒の設計開発は益々重要となってきている。金属錯体と有機分子の融合によるアプローチは、現代の有機合成反応に求められている高効率・高選択的合成に応える一つの方法論として近年、注目されるようになってきた。申請者らはその可能性に逸早く着目し、「金属錯体/キラルブレンステッド酸」二成分触媒系による不斉合成反応の開発を積極的に展開してきた。本申請研究では、二成分触媒系の方法論を有機塩基触媒へと発展させ、「有機塩基/キラルルイス酸」協奏的二成分触媒系による超効率的分子変換反応の開発を行う。本研究は、有機塩基による基質の活性化とキラルルイス酸による立体制御という協奏的な効果により、従来の有機塩基触媒反応を凌駕する高効率・高選択的触媒系を構築し、次世代分子変換と呼ぶに相応しい触媒反応系の開拓を目的とする。有機塩基とキラルルイス酸を相乗的に組み合わせた協奏的二成分触媒系による反応開発を目的とする本申請研究では、キラルアート型錯体の形成を触媒反応系の設計戦略として開発研究を進める。主に下記の2種類の不斉配位子について計画している。 ①「有機塩基/キラルリン酸塩」協奏的二成分触媒系によるアート型錯体を鍵中間体とする高度分子変換反応の開発では、主にアルカリ土類金属ならびに希土類金属塩(イッテルビウム塩)を中心金属とするビナフトール由来のリン酸塩を有機塩基と組み合わせ二成分触媒系を探索。 ②「有機塩基/キラルSchiff塩基金属塩」協奏的二成分触媒系によるアート型錯体を鍵触媒とする高度分子変換反応の開発では、主にアルカリ金属を中心金属とするキラルSchiff塩基との塩を有機塩基と組み合わせ二成分触媒系を探索。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キラルアート型錯体の形成を触媒反応系の設計戦略とする本申請研究のうち、平成26年度は、①「有機塩基/キラルリン酸塩」協奏的二成分触媒系によるアート型錯体を鍵中間体とする高度分子変換反応の開発では、主にアルカリ土類金属ならびに希土類金属塩(イッテルビウム塩)を中心金属とするビナフトール由来のリン酸塩を有機塩基と組み合わせ二成分触媒系を探索し、次世代分子変換反応の開拓を目指した。 キラルリン酸は多彩な分子変換反応の優れたキラルブレンステッド酸触媒として機能することが明らかとなっているが、対応する金属塩も不斉触媒反応に多用されており、キラルリン酸同様、キラル共役塩基による効果的な不斉反応場が期待される。この際、反応に適した中心金属を選択することで、触媒活性と立体化学制御の双方を十分コントロールすることが可能と考えられる。一方、アニオン種の発生に有機塩基を用いることで、触媒量の塩基による反応促進が期待できる。中心金属としては、配位交換活性な性質が強く求められることからアルカリ土類金属ならびに希土類金属を中心に検討した結果、イッテルビウム塩をまた、有機塩基としてはトリエチルアミンなどの代表的な有機アミンを用いることで、収率良く、まずまずのエナンチオ選択性で生成物が得られることを明らかにした。収率良く生成物を得ることに成功したが、エナンチオ選択性の向上には至っていないため、やや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き有機塩基/キラルリン酸塩、二成分触媒系を継続して検討するが、一方で、より高度な制御を実現するため、研究計画②「キラルSchiff塩基を不斉配位子とするルイス酸触媒を用いた協奏的二成分触媒系の開発」を併行して実施する。制御された不斉反応場の構築には、求核剤ならびに求電子剤と触媒との相互作用を同一分子上で行い、かつ、それぞれの反応基質と相互作用する位置を特定しておく必要がある。こうした観点からキラルアート型錯体を形成する際、求核剤であるアニオン種を直接作用させるのではなく、配位子上にアルコールなどの酸性官能基を導入しておき、有機塩基により脱プロトン化しアート型錯体を形成する方法論を計画している。この際X2Lタイプの3座配位型Schiff塩基をアルカリ金属と組み合わせると、有機塩基触媒を作用させることでキラルアート型錯体を形成することができる。このアート型錯体の特徴はプロ求核剤(Nu-H)と反応することで求核種を生じるとともに触媒に導入していた酸性官能基が再生する点である。この再生した酸性官能基は水素結合を介して求電子剤を捕捉するとともに、求電子剤が反応する際の前後において電荷の出し入れをスムーズにする役割を果たすことが期待される。スムーズな電荷の出し入れは活性化エネルギーを低下させる上で極めて重要な要素であり、理想的な反応場を構築することができる。このようにアート型錯体形成に基づく理想的な反応場形成を基軸とした協奏的二成分触媒系を構築することで高度な立体化学制御システムの設計と高い触媒活性の獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、キラルルイス酸に導入する光学活性な配位子の合成を終了し、有機塩基との協奏的二成分触媒系の探索を行う予定だった。しかし、配位子の合成実験に使用していたNMR分析装置、UPLC質量分析装置などを移設するため、一旦停止し、その後、当装置の再設置、再調整に予定外の時間を取られたため、予定していた配位子の合成実験の再開に5ヵ月を要した。そのため、計画通りに研究を実施できなくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、予定していた光学活性な配位子の合成を直ちに完了し、有機塩基との組み合わせによる協奏的二成分触媒系の探索を次年度に行うこととし、次年度使用額をその経費に充てることとしたい。
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