研究課題/領域番号 |
25620074
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 雄二郎 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00198863)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機合成 / 有機触媒 / 不斉合成 / 天然物合成 / プロスタグランジン |
研究概要 |
プロスタグランジンは強力な生物活性を有数する天然有機化合物であり、その誘導体は医薬品として臨床で使用されている。多くの研究者によってその合成研究が行われている。実際に医薬品の製造に用いられているCoreyの合成では、例えばPGE1に関しては19段階のステップを必要とする。我々は短工程でのPGE1メチルエステルの合成を検討した。我々は既にdiphenylprolinol silyl ether 触媒がアルデヒドとニトロアルケンのマイケル反応の優れた触媒であることを明らかにしている。今回、スクシンアルデヒドとニトロアルカンにこの触媒を作用させると、不斉触媒マイケル反応に引き続き、Henry 反応が進行し、形式的不斉3+2付加環化反応が進行する事を見出した。アルデヒドを単離する事なく、連続してリン酸エステルとのホーナー・ワズワース・エモンス反応を行い、ω-鎖を構築し、プロスタグランジンに必要な全炭素を導入した。(-)-Diisopinocamphenyl chloroboraneを用いてα-鎖のC15位カルボニル基をジアステレオ選択的に還元し(dr = 96 : 4),アリルアルコールとした後、ニトロアルコールの脱水反応によりニトロアルケンを収率75%で合成した。エナンチオ選択性は94% eeと極めて高く,最初の不斉反応が立体選択的に進行している事が明らかになった。次にDABCOを作用させることにより、一挙にシクロペンテノンが生成した。以下、過酸化水素水によりエポキシドとした後, 亜鉛によるエポキシドの開環反応によりプロスタグランジンE1メチルエステルを合成した。なお、最後の4段階は一つの反応容器内で行う事ができ、最終的には3つの反応容器を用いるだけの効率的なPGE1メチルエステルの合成法を確立する事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定化合物のプロスタグランジンE1メチルの3ポット合成法を予定よりかなり早く確立することができた。研究計画段階では、できるだけ短工程での全合成を目指していたが、わずか3ポットで合成する事ができるとは予期していなかった。予想以上の成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究でプロスタグランジンE1メチルエステルを合成できたが、プロスタグランジン誘導体には実際の医薬品として使用されている化合物が他にも存在する。そのような化合物も今回開発した手法を利用すれば簡便に合成する事ができると考え、それらの化合物の短工程合成法に挑戦する。また本合成の途中で見いだした、不斉触媒3+2付加環化反応に関してもその一般性を検討する。新規光学活性シクロペンタン誘導体の合成手法としての確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
予想以上に計画が首尾よく進行したために、1年目は予定より少ない経費で多くの成果をあげることができた。 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進した事に伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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