プロスタグランジンは強力な生物活性を有数する天然有機化合物であり、その誘導体は医薬品として臨床で使用されている。我々は本萌芽研究で、既にプロスタグランジンE1メチルエステルのわずか3ポットでの合成に成功している。この合成の途中で我々は予期していなかったニトロアルケンからのα,β―不飽和ケトンへの変換反応を偶然見いだし、その反応機構に関する詳細な検討を行った。昨年度は、プロスタグランジンの他の誘導体の合成を目的に、まず始めに、鍵反応とするスクシンアルデヒドとニトロアルケンの不斉形式的3+2付加環化反応の一般性の検討を行った。その結果、diphenylprolinol silyl etherを用いた、連続的不斉触媒マイケル反応、分子内Henry反応によるドミノ型形式的3+2付加環化反応が、広い一般性を有する事を明らかにすることができた。さらに、この反応を用いて、慢性動脈閉塞症の治療薬であるプロスタグランジン誘導体であるベラプロストの合成に取り組んだ。まだ全合成には成功していないが、基本となるシクロペンタン部位は高い不斉収率で得られる事を明らかにした。またω鎖を有する部分構造の合成に成功した。今後、α―鎖の不斉合成を行い、全合成を達成する予定である。
|