研究実績の概要 |
光学活性な1-モノアシルグリセロールを得る手法として不斉アシル化反応の検討を詳細にした。不斉アシル化は非対称化反応と速度論的光学分割を行った。特に非対称化反応はリパーゼ、溶媒、反応時間、アシルドナー、アクセプターといった、全ての因子を詳細に検討し最適化した。アシルドナーにはヒマシ油、ヒマシ油誘導体、リシノール酸誘導体などを用い、それぞれ最適化していった。その結果リシノール酸ビニルをアシルドナーとして用いたとき、ジアステレオ選択性、収率の著しい向上が見られた。リパーゼとしてはアシルドナーにヒマシ油を用いた時は、PPLでリシノール酸ビニルを用いた時はLipase AKを用いた時が、最適なリパーゼであった. 光学活性な1-モノアシルグリセロールを得るもう一つの手法としてリシノール酸から1,3-ジアシルグリセロール誘導体を合成し、リパーゼを用いて加水分解する時の反応条件を詳細に検討した。その結果、Lipase PSを用い25分間反応させることで94% deと高いジアステレオ選択性で1-モノアシルグリセロールを得ることができた。含硫黄糖脂質であるスルホキノシルジアシルグリセロール(SQDG)の効率的な合成法を開発するために、ヒマシ油とD-グルコースを出発物質に用い新しい含硫黄糖脂質の合成を検討した。ヒマシ油はLipase AKを用い、不斉加水分解ることで得た光学活性なジアシルグリセロールへと誘導し、グルコースはトリクロロアセチルイミデートを脱離基に持つグリコシルドナーへと誘導した。また、それらをグリコシル化することで新しい含硫黄糖脂質の合成およびリシノール酸の官能基に様々な変換を行った含硫黄糖脂質誘導体の合成を検討し、鍵中間体に導く事ができた。
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