研究実績の概要 |
電解反応を用いた有機合成は化学反応剤を必要としない環境負荷の小さい反応である。本研究の目的は、「ラジカルカチオンプール法」などラジカルカチオンを用いた電解合成法を確立するとともに、それを用いたC-H結合の官能基化反応を開発することである。本方法は、反応剤や触媒を用いずC-H結合を直接官能基化できる点で、優れた合成法となるものと期待できる。 本年度は、芳香族化合物をメシルイミダゾール存在下に電解酸化することによりイミダゾリウムイオン中間体を得、これをピペリジンと反応させることによりN-芳香族置換イミダゾールを合成する方法を開発した。さらに、ベンジル位の水素をもつ芳香族化合物をメシルイミダゾール存在下に電解酸化し、得られたイミダゾリウムイオンをピペリジンと反応させることにより、ベンジル位にイミダゾールの導入された生成物を得ることもできた。本手法の成功の鍵はカチオン性中間体が生成することにより電極反応による過剰酸化が抑制されることである。カチオン性中間体は電解終了後にピペリジンと反応させることにより中性の窒素官能基をもつ化合物に変換できる。 さらに本手法を用いて,より電子豊富な芳香環の隣のベンジル位を選択的に官能基化し、生理活性物質を従来法より高収率・省ステップで合成し、本手法が新しい合成ルートを与えうることを明らかにした。
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