研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究はこれまで合成が困難であった8の字型やカテナン型を含む多環状ポリマーを簡便かつ精密に合成する手法の確立を目的としている。平成25年度はエポキシドモノマーのリビングアニオン開環重合を基盤として、ポリエーテルからなる大環状ならびに8の字型ポリマーの精密合成法を確立した。具体的には、t-Bu-P4/アルコール開始系を用いたブチレンオキシドのリビング重合によって、望みの位置にアジド基とエチニル基を有する前駆体ポリエーテルの精密合成を行った。続いて、これを大希釈条件下でクリック反応を行うことでアジド基とエチニル基を分子内カップリングさせ、目的の大環状ならびに8の字型ポリエーテルを合成した。適切なリビング重合法との組み合わせによって、本手法は大環状および8の字型のポリステルの合成にも適応可能であることを確認した。さらに、上記の合成手法をもとに、大環状、8の字型などのジブロックコポリマーの合成にも着手した。t-Bu-P4/アルコール開始系により親水性と疎水性のエポキシドモノマーをブロック共重合し、適切な位置にアジド基とエチニル基を導入したブロックコポリマー前駆体を合成した。これらの分子内クリック反応によって目的の多環状ジブロックコポリマーの精密合成を達成した。このようにして得られた多環状ジブロックコポリマーの溶液物性を検討した結果、環状構造の違いが水中でのミセル形成に影響を与えることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
多環状ポリマーを合成する手法はおおむね確立できている。さらに、その手法の普遍性についても確認できつつあり、研究はおおむね順調に進行している。しかし、平成25年度に行うべきクローバー型およびカテナン型ポリマーの合成は現在のところ検討中の段階にある。基盤となる多環状ポリマーの合成手法は既に確立されているので、平成26年度中に本課題は十分達成可能であると考えられる。一方、多環状ジブロックコポリマーの合成ならびに物性評価は平成26年度に行う予定であったが、上記のとおり、合成手法が順調に確立できたことから前倒しで平成25年度に実施することができた。以上より、研究はおおむね順調に進行している。
これまでのところ、ポリエーテル系の多環状ポリマーの合成に終始しているため、今後はポリステルやビニル系ポリマーにおいても多環状ポリマーの合成が可能か検討を進める。また、未だ達成できていないクローバー型およびカテナン型ポリマーの合成を今後、迅速に進める予定である。多環状ジブロックコポリマーの合成ならびに物性評価は平成25年度に前倒しで実施したが、平成26年度ではさらに詳細な測定実験を行い、多環状構造と自己組織化の相関関係をより明確なものとするための検討を進める予定である。
当該助成金が生じた状況は年度末の購入に関する経理上の問題と物品の納品遅れがある。また、研究の性質上、試薬やガラス器具の購入が多く、実験の進行により購入時期が変動することから次年度への繰り越しとなった。次年度への繰り越しとなった予算は主に試薬とガラス器具に使用する。翌年度分として請求した研究費と合わせたて効率的に使用するように心がける。
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Macromolecules
巻: 47 ページ: 2853-2863
10.1021/ma500494e
巻: 46 ページ: 1772-1782
10.1021/ma4000495
巻: 46 ページ: 3841-3849
10.1021/ma4006654