研究課題/領域番号 |
25620101
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
杉安 和憲 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80469759)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 共役系高分子 / 蛍光 / 有機エレクトロニクス |
研究概要 |
本研究は、独自の精密分子設計に基づいて、発光性と機械特性に優れた共役系高分子を合成することを目的とする。 平成25年度は、環状側鎖で覆われたモノマー分子の効率的な合成経路の確立を目標とした。分子設計と反応条件を最適化することによって、グラムスケールでのモノマー合成を実現した。このモノマーを用いて、紫、緑、黄、赤色の蛍光性共役系高分子を合成することができた。種々のスペクトル測定、蛍光量子収率測定、蛍光寿命測定などから、我々が新規に設計・合成した共役系高分子が、薄膜状態で優れた発光特性を示すことを明らかにした。 非常に興味深いことに、これらの共役系高分子は互いに相分離することなく、任意に混和し、ブレンド膜を形成した。この結果、先の4種類の蛍光色を混合することによって、様々な蛍光色を発する高分子薄膜を作製することができた。高分子のブレンドにおいて、相分離の制御は極めて重要である。我々が設計した高分子は、異なる共役系を持っているにもかかわらず、全てが共通の環状側鎖によって被覆されているため、互いを区別すること無く混和できると考えられる。したがって、高分子の物性(相溶性)と機能(発光性)を独立に設計できる新しい共役系高分子として非常に興味深い。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は、環状分子で覆われたモノマー分子の効率的な合成経路の確立を目標としたが、これについては年度の早い段階で達成できた。複数の合成経路を同時進行で進めたことが功を奏した。また、得られたモノマーをベースに、様々な発光色を有する共役系高分子の合成に成功した。さらに、予想外の結果として以下の2つの興味深い現象を見いだした。 (1) これらの共役系高分子は、互いに相分離すること無く、任意に混和可能であった。これは高分子ブレンドにおいて、非常に珍しい挙動である。これによって合成した蛍光性共役系高分子を混合し、様々な蛍光色を合成できることを実証した。 (2) これらの共役系高分子のガラス転移温度は異常に低かった。これは、共役系高分子間の相互作用が阻害されたためと考えられる。これによって、発光性の共役系高分子を容易に熱成形できることを見いだした。 いずれも、本研究で得られる共役系高分子を有機エレクトロニクスデバイスへと応用する上で非常に重要な知見となる。
|
今後の研究の推進方策 |
得られた共役系高分子を用いたデバイスの作製、特に有機エレクトロルミネッセンスデバイスの作製を目標とする。 まず、共役系高分子のブレンド膜について詳細な光物性評価を行う必要がある。これらは量子収率測定や蛍光寿命測定から行う。ブレンドした場合に、異なる共役系高分子間で励起エネルギー移動が起こっていると考えられる。蛍光共鳴エネルギー移動のメカニズムに基づいて、ブレンド膜中でのエネルギー移動効率と発光色の相関を明らかにする。以上の光物理特性をもとに、共同研究もあわせてデバイス応用を目指す。
|