本研究では、高分子主鎖が被覆された共役高分子の効率的な合成法を確立し、その光機能材料としての応用展開を目的とした。共役系主鎖を立体的に孤立させ、励起状態の無輻射失活を抑制することによって、薄膜状態における高い発光特性を期待した。平成25年度までに蛍光性の共役系高分子の合成を確立し、光物性や機械特性について詳細に評価した。その際に、被覆共役系高分子同士はブレンド性が良く、任意に混和し、様々な蛍光色を合成できることを見いだした。 そこで平成26年度は高分子ブレンドについて詳細に評価した。青色の蛍光を発する被覆共役系高分子1と黄色の蛍光を発する被覆共役系高分子2のブレンド系について吸収スペクトル、蛍光スペクトル、蛍光寿命測定、および蛍光量子収率測定を行った。ブレンド中では、1から2への効率的な蛍光共鳴エネルギー移動が起こることを確かめた。非常に興味深いことに、ブレンドすることによって全体としての蛍光量子収率が向上することを明らかにした。これは相分離しない被覆共役系高分子に特有の利点であると考えられる。すなわち、相分離しないことによってエネルギーアクセプターである2は1のマトリックスの中で希釈された状態となっており、蛍光量子収率が低減されない。 また、本年度新たに被覆共役系高分子のブロックコポリマーを展開した。このブロックコポリマーは、被覆されたブロックと被覆されていないブロックからなり、被覆されたブロックは高分子主鎖間の分子間相互作用によって自己集合する。この結果、ブロックコポリマーで一般的に見られるミクロ相分離構造を形成した。これまでの研究で明らかな通り、被覆されるか、されないかによって、共役高分子はまったく異なる物性・機能を示す。本研究のように、分子間相互作用を精密設計することは新しい高分子電子材料の創製につながると期待される。
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