研究実績の概要 |
同位体分析の前処理として超臨界水酸化法を用いる手法の確立をめざし、精米をサンプルとした検討を行った。500 °C, 25 MPa, 反応時間120 minの条件において、SUS製の回分式反応器を用いて超臨界水酸化反応を行った。反応器には過酸化水素水を封入し、熱分解により生じる酸素を酸化剤とした。酸素量は、処理した精米の全成分が炭水化物であると仮定し、H2OとCO2にまで完全酸化する反応に要する酸素量の3倍を用いた。また、大気中のCO2の混入を防ぐため、反応溶媒として用いる蒸留水は窒素バブリングによる脱気をして用い、反応器へサンプル等を封入する作業等はすべて窒素雰囲気下で行った。生成した気体を窒素雰囲気下で真空容器に回収し、GC-TCDにより成分の定量分析を行うとともに、同位体比質量分析計によりCO2の炭素の安定同位体比分析を行った。また、液体成分についてはTOC計により液中の炭素の残存量を測定した。 魚沼産コシヒカリをサンプルとして用いた場合、この処理によって生成した気体中にCO2以外の炭素由来成分は含まれず、99.72 %(Cベース)以上の炭素がCO2にまで酸化された。この気体中の炭素同位体比を実際に測定したところ炭素安定同位体比は-28.8±0.10 ‰であり、従来の燃焼法による同位体比の測定結果に、本法での反応管内の気液平衡を考慮した値(-28.7 ‰)とほぼ一致した。以上のことから、大気中のCO2を混入することなく前処理を行う手法を確立でき、超臨界水酸化法が食品の炭素同位体計測の前処理として適用可能であることが実験的に示されたと考えられる。
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