研究課題
挑戦的萌芽研究
平成25年度は,市販の円二色性(CD)の測定装置を用いて,蛍光を検出する蛍光円二色性測定(Fluorescence Detected Circular Dichroism; FDCD)に着手した。この装置は,通常,光吸収の円二色性(以下,吸収CD)のスペクトルを測定するものであるが,検出方法を変えることで,励起波長を変えながら蛍光強度を検出することができるようになる。そこで,まず蛍光を示すキラルな物質の代表的なものとして,タンパク質を用いて,紫外領域において吸収CDとFDCDの測定を行い,比較した。その結果,両者はほぼ同程度の感度を有していることが分かった。通常の分光測定においては,吸収測定よりも蛍光測定のほうが100倍から10000倍もの高い感度を有しているが,今回使用した市販の測定装置では,吸収CDとFDCDには感度にあまり違いがないことがわかった。また,吸収CDやFDCDの結果には,しばしば偽シグナルが現れることが知られている。そこで,いくつかのキラルな物質(蛍光性のアミノ酸など)のエナンチオマーを用いて,シグナルが互いに鏡像関係になるかを検討した。その結果,吸収CDではほとんどの系で鏡像関係のスペクトルが得られたが,逆にFDCDでは,ほとんどの系で鏡像関係のスペクトルが得られなかった。以上の検討から,市販の測定装置では,有効なFDCDのデータが得られないことが明らかになった。
3: やや遅れている
上記のように,予想に反して,市販の円二色性の測定装置では,有効なFDCDスペクトルが測定できなかったためである。
平成25年度は,市販の円二色性の測定装置を用いてFDCDのスペクトルを測定したが,高感度かつ正確さを持って測定することができなかった。市販の円二色性の測定装置は,本来,吸収CDスペクトルを測定するための装置であるため,今回のように,低感度であったり,偽シグナルが出たりしている可能性が高い。そこで,平成26年度は,自作のFDCD装置の作製に着手する。FDCD装置に適した光学部品類を組み合わせることで,本来のFDCDスペクトルを取得できるものと期待している。また,その後,蛍光顕微鏡と組み合わせることで,最終的な目的である単一DNA分子のキラリティのリアルタイム測定を可能にする。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/tsukahara/