平成26年度は,平成25年度に引き続き,市販の円二色性(CD)の測定装置を用いて蛍光を検出する蛍光検出円二色性測定(Fluorescence Detected Circular Dichroism; FDCD)の基礎検討を続けた。この装置は,通常の光吸収の円二色性(吸収CD)のスペクトルを測定するものであるが,検出方法を変えることで,励起波長を変えながら,蛍光強度を検出することができる。 平成25年度に,タンパク質のFDCD検出では,偽シグナルが現れることがわかったので,平成26年度はその原因と解決法についてより詳しく検討した。そのために,蛍光物質であり互いにキラルなキニーネとキニジンをまず用いた。その結果,偽シグナルが現れる最大の原因は,分子回転が遅いことによる蛍光異方性であることがわかった。さらに,偽シグナルの強度は,検出器の設置場所にも依存することがわかった。 上記の結果に基づき,偽シグナルの出にくい検出器の設置場所を選び,蛍光ラベル化したアミノ酸およびタンパク質のFDCD測定を行った。その結果,蛍光ラベル化したアミノ酸では,LとDのアミノ酸で互いに正負が胸像関係のFDCDシグナルが測定され,測定方法の正当性が確認できた。さらに,蛍光ラベル化したタンパク質でも本来のFDCDシグナルを測定することが可能であった。 このように,平成26年度は,FDCD測定における偽シグナルの原因と解決法を明らかにした。この成果を基に,今後より高い感度でCD測定を行うことが可能になる。
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