研究課題/領域番号 |
25620119
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
塩路 幸生 福岡大学, 理学部, 准教授 (80291839)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光異性化 / アゾベンゼン / 細胞 / ホスホニウム塩 |
研究概要 |
細胞は核や小胞体、ミトコンドリアなどの微小器官の集合であり、それらは脂質膜により他の微小器官と隔てられている自己組織化したナノ集合体の集まりと考えることができる。これらは、一見、無秩序に配置されているように見られるものの、細胞内での損傷に対する修復の迅速さや、シグナル情報伝達の正確さを鑑みると、微小器官の集合体である細胞の中でその微小器官の存在する位置、あるいはタンパク質の遊走する場所に意味を考えることを禁じえない。本研究では、細胞内の特定の微小器官に対して、薬物による化学的刺激ではなく、分子生物学的手法による過剰発現やノックアウトでもない、アゾベンゼン骨格の光異性化を利用した物理的摂動を加えることのできる分子の作成を行う。 細胞膜およびミトコンドリアに局在化するアゾベンゼンの合成:細胞内微小器官のひとつであるミトコンドリアに局在化するアゾベンゼンとしてホスホニウム塩を導入した化合物を合成した。目的とする化合物は、保護された4-アミノ-4’-ヒドロキシアゾベンゼンをもとに合成を行った。目的骨格となるジアリールアミノヒドロキシアゾベンゼンは、中野らにより報告されている合成法(J. Mater. Chem., 2007, 17, 4953–4963)を参考に4-アミノ-4’-ヒドロキシアゾベンゼンの置換アリールハライドとのUllmann反応により行い、ヒドロキシ基の脱保護の後、塩基存在下でホスホニウム塩部位およびアルキル部位の導入を行った。本目的化合物の構造決定並びに光学的特性の詳細な検討を行い、本化合物は430nm付近の光および500nm付近の光により光異性化を起こすことが明らかになった。ホスホニウム塩を導入することにより水溶性が向上し今後、今後細胞導入実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞形質膜、ミトコンドリア、ならびにリソソームに局在あるいは凝集を促すプロモータ部位を配したアゾ基を有する2系統の化合物を合成する。ひとつはアゾベンゼン骨格を有するもので、もうひとつは、細胞小器官を形成する生体分子との相互作用を増大させるために上記のプロモータ部位をより多く配したジアゾベンゾクラウンエーテルである。これらの分子を細胞内の特定の器官に局在化あるいは凝集させて平面偏光照射による光異性化を行い、細胞に物理的摂動を加えることを目的としている。 現在、合成に成功している分子は、速やかに細胞導入が可能であると考えられる一方で細胞内のどの微小期間に導入されているかが現化合物ではわからない。局在化している細胞内微小器官が特定できるような官能基の導入が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、目的化合物が導入されている微小器官を特定するために、近赤外領域に蛍光波長をもつ色素を導入した。アゾベンゼン誘導体の合成を行い、その、光特性を確認した上で、細胞導入実験を行う。細胞導入直後から一定の時間は、細胞形質膜への局在化が見られ、その後、リソソームに凝集するペプチドを導入したアゾベンゼン誘導体の合成を行う。本合成に関しては、アゾベンゼンとペプチド鎖の結合にクリック反応を用いる。以上の行程で得られた化合物が導入された細胞のミトコンドリア、核やリソソームなどいくつかの微小器官を蛍光色素により染色し、観察細胞を作成する。現有の蛍光顕微鏡にレーザー光源を適当な入射角をもつように装着し、一定間隔で光照射を行い、蛍光染色した微小器官の挙動を観察することで、導入した化合物の効果を検証する。
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