顕微ラマンイメージング分析は試料の2次元ケミカルイメージを観測する方法として注目されているが、広く用いられているマッピング方式ではデータの取得に時間がかかるという大きな欠点を持っている。本研究では、チューナブルバンドパスフィルターと高感度CCD検出器を用い、簡便にかつ高速で試料の観察領域全体の高精細な直接ラマンイメージを取得可能な装置を開発することを目的とした。 H25年度に構築した手動制御の直接ラマンイメージングシステムに、チューナブルバンドパスフィルター入射角度調整用の自動回転ステージを導入した。これをPC にて制御することにより、ラマン画像の取得タイミングと2枚のチューナブルフィルターの角度調整を同期するよう自動制御し、波数分解能を一定に保ったまま、異なる波数領域のラマンイメージを順次取得し、ハイパーラマンイメージを収集できるシステムを構築した。また、より高速なイメージングを可能にするため、イメージインテンシファイアをイメージ検出系に導入した。これらの改良により、当初の目標に近い10画像/秒の速度で画像取得を行うことができた。波数分解能30cm-1の条件で200-2000cm-1の波数領域のメガピクセル画素数のハイパーラマンスペクトルイメージングが測定時間200秒で可能となった。 しかし、本研究で構築した光学系では試料の位置によりバンドパスフィルターへの入射角が異なるため、結像イメージ上でバンドパス波数のシフトが起こることがわかった。この波数シフトは、ハイパーイメージの取得後に解析的に補正可能であるが、特定ラマン波数の時間変化を追うための高速イメージングは困難であることが判明した。この問題を解決するため、スリットを試料上部に配置することにより顕微光学系をテレセントリック光学系とすることを試みた。この改良によりイメージ上での波数シフトの問題を解決することができた。
|