研究課題/領域番号 |
25620121
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小松 康雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (30271670)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオセンサー / DNA / 電気化学 / グルコース / グルコースオキシダーゼ / オリゴヌクレオチド |
研究概要 |
DNA上にビオチンおよびフルオレセインを種々の距離間隔で配置したDNAを設計、合成した。DNAには、相補的な配列の天然型DNAと2本鎖間を架橋して安定化させた架橋化DNAを作製した。続いて各DNA構造体を金電極上に固定化し、グルコースオキシダーゼ(GOx)とペルオキシダーゼ(HRP)を、アビジン、抗フルオレセイン抗体それぞれを介してDNA上に固定化した。GOxがグルコースを酸化させ、その際に生じる過酸化水素をHRPが還元し、その電子供与はフェロセンを介して電極から行われることでグルコース消費量を電流値として得られると考えた。作製した酵素固定化電極はグルコースを含む溶液に浸し、電流値を計測した。 反応の結果、架橋化した2本鎖DNAおよび通常の相補的DNAのいずれを用いた場合においても、GOxとHRPを同一電極上に有する場合に、グルコース濃度に依存した電流が検出されることを確認した。しかしながら、架橋化DNAを酵素の足場に用いた電極の方が、天然型DNAよりも高い電流値を示した。この結果は、通常のDNAは電極の作製から酵素反応の間で2本鎖DNAが解離し、電極上の酵素量が低下したためであると考えている。また重要なこととして、2種類の酵素を異なるDNA分子上に有する電極よりも、同一分子上に2種類の酵素を有する方が高い電流値が得られることも明らかになった。これは、2種類の酵素がより接近した距離に配置されることが重要であることを示唆しており、そうした空間的配置を架橋化DNAで提供可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
架橋化DNAを作製した後に架橋化DNAを用いた酵素固定化電極の作製を行った。さらに酵素固定化電極を用いることで、グルコース分解に連動した電気検出が可能であること、また架橋化DNAが天然型DNAよりも酵素反応の足場として有効であることを確認したため、計画通りに進んだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
さらに高い電流値を得るために、DNAの構造の最適化と酵素の固定化密度を上げる工夫を進める。続いて、架橋化DNAを用いることによって微小電極上にもGOxとHRPを固定化し、電流値計測が可能であるかどうかを検証する。酵素を固定化した微小電極を作製できた場合には、続いて培養細胞に同電極を接近させ、細胞のグルコース消費量を定量することが可能であるかどうかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は当初の計画通り概ね進行したが、予想よりも少量のDNA量で条件検討が可能となった。そのため、合成する試薬量などが減少した。 合成DNAと架橋化に用いる試薬を購入すると同時に、さらに多くの種類の架橋化DNAを作製する。その作製、精製を素早く行う必要があるため、実験補助員を雇用する。また、酵素を固定化した微小電極の作製に成功した場合は、細胞のグルコース消費量の測定に展開するため、必要に応じて細胞培養関連の試薬類も購入する。
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