アミノ酸に対応したコドンが終止コドンに置き換わるナンセンス変異は、疾患に関連した遺伝子変異の約1/3を占める。この様な疾患に対する治療法の一つとして、終止コドンを翻訳時に読み飛ばすリードスルー誘導法が注目されており、その候補化合物にはアミノグリコシド系抗生物質(AG)が検討されている。しかし、既存のAGは、遺伝子選択性・コドン選択性がなく、副作用などの問題から実用化には至っていない。本研究では、AGをオリゴ核酸と連結することにより、配列選択的にmRNA上へ提示し、標的のコドンに対して特異的に作用させる。これにより、リードスルー効率の向上と副作用の軽減が同時に期待される。本申請では、その実現に向け、連結型分子の構造最適化を行い、培養細胞レベルで配列選択的リードスルーの実証を行った。研究を推進する上で根幹となるのは、①「AG‐オリゴ核酸連結分子」の合成、②非細胞系・細胞系でのリードスルー評価、③その結果に基づいた分子の再設計である。この中で、①連結分子の合成が最も時間を要する。このため、AGの誘導体化を研究協力者1名(博士課程学生)が実施、これと並行して核酸部分の合成を申請者が担当し、連携のもと合成を進めた。②評価には、申請者の構築したPTC導入ルシフェラーゼmRNAおよびDNAを用いた。非細胞系または細胞系の翻訳におけるPTCリードスルーによる全長ルシフェラーゼの発現を、ルシフェラーゼ活性を指標として定量し、ここで得られた結果をもとに、「AG‐オリゴ核酸連結分子」の再設計③を行った。以上、①~③の過程を繰り返すことで、分子構造を最適化した。
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