本研究では、細胞内の任意の対象蛋白質を小分子化合物の添加によって選択的に凝集させることで不活性化することのできる「小分子応答性蛋白質凝集システム」を開発することを目的とする。前年度は、FKBPとFRBからなる凝集タグ候補配列を計50種類ほど設計し、それらに蛍光蛋白質を融合したコンストラクトの発現ベクターを作成した。培養細胞を用いたスクリーニングの結果、ラパマイシンの添加によって速やかに(イメージングで観察できるほどの大きさの)凝集体を形成するコンストラクトを複数見出すことに成功した。本年度は次のステップとして、それらの凝集タグコンストラクトを用いたシグナル蛋白質のコンディショナルな阻害を検討した。モデル標的蛋白質としてRasを選択し、凝集タグを融合した恒常活性型Rasならびに下流ERK経路をラパマイシンによって不活性化・阻害できるかどうかを評価した。基礎的段階ではあるものの、ラパマイシンの添加によって下流ERK経路の活性を阻害できることが確認された。これは、凝集タグを融合した恒常活性型Rasがラパマイシン誘導凝集によって不活性化したものと考えられる。今後より詳細な解析を行いつつ、よりサイズが小さく凝集効率の高い凝集システムへと改良することで、小分子化合物による高汎用的な蛋白質機能阻害技術を創出できるものと期待される。
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