研究課題/領域番号 |
25620129
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
井上 将彦 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 教授 (60211752)
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研究分担者 |
阿部 肇 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 准教授 (10324055)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工オリゴマー |
研究概要 |
リボザイム、DNA ザイムに倣い、シンプルな水素結合性ユニットの配列により分子触媒の作用と配列の複製が可能な人工オリゴマー「ピリジン/フェノールオリゴマー」を創出する。 平成25年度:アセチレンを介してピリジン環とフェノール環とが交互に連結された人工オリゴマーを用い、自己相補的な二重らせん構造の構築を試みた。その分子設計においては、ピリジン環が水素結合アクセプターとして、フェノール環が水素結合ドナーとしてはたらき、二重らせんを形成しながら自己会合すると想定した。今回、ピリジンとフェノールを1個有するオリゴマー 2mer、3個ずつ有するオリゴマー 6mer、 6個ずつ有するオリゴマー 12mer を合成した。MOM 基で保護されたフェノール誘導体と2,6-ジブロモピリジン誘導体を出発原料とし、薗頭反応を利用することで、交互にピリジン環とフェノール環を連結し、最後に MOM 基を脱保護することで目的のピリジン―フェノール交互型オリゴマーを得た。合成した 6mer の CDCl3 溶液について 1H NMR を測定したところ、いくつかのシグナルの化学シフトに濃度依存性が確認された。そして、6mer 側鎖と主鎖末端のプロトンシグナルが、6mer の濃度が高くなるほど高磁場側へ移動した。これは、高濃度の条件下で 6mer の自己会合体の比率が上がり、各プロトンがオリゴマーのπ電子系から受ける異方性効果が高まったためと考えられる。化学シフトの変化から自己会合定数は、2mer が 9.2 × 10^-2 L/mol、6mer は 80 L/mol と算出された。さらに合成したピリジン―フェノール交互型オリゴマーは、β-D-グルコース、β-L-グルコース、β-D-ガラクトース、β-D-マンノースなどの単糖を認識できることを円二色性スペクトルから確認した。特に(3)は、β-D-マンノースと強く会合することが分かった(会合定数:9.2 × 10^7 L/mol)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アセチレンを介してピリジン環とフェノール環とが交互に連結された人工オリゴマーの合成に成功し、得られた人工オリゴマーは、自己会合することも確認している。さらに、人口オリゴマーは、いくつかの単糖を特異的に認識することも確認した。平成25年度の研究計画『(1)相補的二重らせんの形成と配列の複製と(2)分子触媒として適したオリゴマー配列の探索』に関しては、ほぼ達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
分子触媒としてはたらくオリゴマー配列を複製するため、テンプレート合成による配列の複製法を確立する。調製した人工オリゴマーを作用させ、鋳型配列に従って選択的に反応が進行し、配列の複製が起こるかどうかを検討する。さらに、複製によって得られたオリゴマーが実際に親オリゴマーと等しい物性を示すか、確認する。また、人工オリゴマーの配列について、反応に適したように最適化を行う。必要に応じてホスト分子の合成法の新規開発や最適化を行い、安価で簡便にホスト分子が得られるよう努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、本研究室で耐震改修工事が行われた。そのため、それに伴う研究室の移転作業等の実施により研究期間が短くなり、当初予定していた支出が年度内に終わらなかった。 研究実績の概要に記載したように、研究計画に遅延など無く、おおむね順調に進展中である。そのため、前年度使用する予定であった支出は、試薬、溶媒、不活性ガスなどの消耗品費に使用する予定である。
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