研究実績の概要 |
水素結合ドナーおよびアクセプターとなる官能基を一定の間隔をおいて配置すると、その間に OH基をはさみ込む会合部位となる。ここでの二点の水素結合は push-pull の形式で起こり、一点だけの水素結合に比べ強い。そのような会合部位の積極的な利用を考え、ピリジンの2,6-位とフェノールの2,6-位とをアセチレン結合を介して交互に連ねた鎖状オリゴマー「ピリジン-フェノール交互型オリゴマー」の開発を行った。 それらの合成では適宜に薗頭反応を繰り返して、6量体、12量体を得た。合成したオリゴマーについて、自己相補的な構造から期待される二重らせんの形成能力、および単らせんの中空構造から期待されるゲスト分子との会合能力を調べた。 重クロロホルム中、12量体、6量体のそれぞれについて、濃度を変えて 1H NMR を測定したところ、自己会合による化学シフトの変化がみられた。自己会合定数を求めたところ、12量体では Kdim = 600 M-1、6量体の場合は Kdim = 80 M-1、と求められ、相補的な水素結合がはたらいていることが示唆された。 らせん型高次構造の特長は、単らせん構造についてより強くあらわれた。1,2-ジクロロエタン (DCE) を溶媒として、12量体へ octyl α-D-glucopyranoside を滴定していったところ、オリゴマーの吸収領域にらせん型会合体の形成を示す負の誘起 CD が現れ、このときの会合定数は 24,000,000 M-1 と求められた。一方で、鎖長の短い6量体を同じグルコシドと作用させた場合、興味深いことに逆符号の誘起 CD が現れ、会合定数は落ち 4,200 M-1 と求められた。オリゴマーの鎖長が長いほうが、自己会合と糖認識ともに強くあらわれた。
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