本研究はRNAにより形成した高い分子認識能を持つ基質結合部位と、ペプチドに導入した非天然の反応活性中心が協同的に作用するようにRNA-ペプチド複合体構造(RNP)を最適化することにより、合成化学と進化工学とを組み合わせたRNP酵素の設計原理を開拓することを目的とした。申請者らが開発したATP結合性RNPは、そのRNA部位でアデノシン部位を認識するが、ピロリン酸は認識しない。この分子認識の特長を活かして、ATP結合性RNPのペプチドサブユニットに反応モジュールを導入したRNP酵素を構築するために、以下の方法論を検証した。 (1)活性中心を導入したRNPライブラリーの合成:ジメチルアミノピリジン(DMAP)を種々のリンカーを介してN末端に導入したRevペプチド誘導体を合成し、それらとAdo結合性RNA群とをRRE RNA配列を介してRNP複合体を形成させて、Adoに結合するRNPライブラリーを形成した。 (2)活性を指標としたスクリーニング:(1)で構築したRNPライブラリーを用いて、アデノシン骨格を有するパラニトロフェーノルエステルの加水分解能を指標にして、RNPのエステル加水分解能を評価した。その結果、DMAP単独よりも、加水分解反応を加速させるDMAP修飾RNPを選出した。 (3)金属配位子活性中心を導入したペプチドライブラリーの合成: 2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール亜鉛(II)錯体をN末端に導入したRevペプチド誘導体を合成した。引き続き(1)と同様に様々なリンカーを介したペプチドライブラリーを構築し、(2)と同様に活性を評価する。 (2)で得られたRNPをもとにしてRNAとペプチドリンカーのライブラリーを作製することで、さらに加水分解活性の高いRNP酵素が得られれば、本研究で検討したRNP酵素作製法は、一般的酵素作製法となる。
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