研究課題/領域番号 |
25620132
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
村上 章 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (60210001)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | RNA診断 / RNAプローブ / ピレンプローブ / 蛍光分析 / 選択的スプライシング / FRET |
研究概要 |
がん等の疾患の早期診断は早期治療を可能とし、生存率の大幅な向上が期待される。しかし疾患の初期段階では病理検体に病変が認められることは少なく、また現在の生化学的な検査では検出限界以下の病変関連物質を血中から検出出来ず、より高感度の癌診断システムが希求されている。本研究では、組織細胞あるいは血球中の個々の細胞での「RNAの発現プロファイリング」及び「RISCの機能解析」を行う。具体的には、申請者が開発したRNA選択的蛍光核酸プローブを用い、疾患発症の兆候(特異的RNAの発現)をごく初期に捉え早期治療に導く、「RNA診断」システムの開発を目的とする。 昨年度は以下の項目について検討した。(1)RNAおよびRISCをFRETに基づくマルチカラー蛍光検出法による検出システムを開発した。現在までに、RNA中の1塩基変異をFRET効率から判定するシステムを構築した。(2)RISC検出法開発の第1ステップとして、RISC機能の光架橋性アンチセンス核酸による選択的RISC機能制御を試みた。アンチセンス核酸が選択的にRISCに結合した証左を得た。(3)RNA発現異常をリアルタイムに検出するシステム開発の第1ステップとして、選択的スプライシングによるRNA産物の蛍光検出を実施した。スプライシング異常に伴うRNA産物をHomogeneous Flurescence Assay法(非結合蛍光プローブの除去を必要としない)による検出に成功した。 以上の研究と並行して、(4)エキソソームにより輸送されるRNA/RISCの解析法開発、(5)プローブの細胞内局在の電子顕微鏡解析を目的として、超微細金粒子とRNAプローブとの複合体調製法の検討を開始した。2014年度では①細胞抽出液、②固定細胞、③生細胞を用いたリアルタイムRNAモニタリング法を開発し、効率的RNA診断法に展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA診断法はその重要性にもかかわらず、方法論の確立が遅れている。現在までの方法はPCRを中心技術に据えた方法であり、簡便性に欠け、また特許権利が外国にあり、実験経費も膨大である。一方、申請者の開発したRNA特異的RNAプローブは高感度にRNA選択的に検出できる性能を有し、また我が国独自の手法により開発されたプローブであるため(特許第4238381号)、高感度、高精密でかつ安価なRNA診断システム構築が可能である。 本研究では、FRET法、蛍光分光法、光架橋核酸プローブによるRISC機能選択的制御法、を柱に検討を進めた。その結果、予想以上に高感度、高選択的にRNAを検出することが出来、また、選択的スプライシングの評価(モデル系)、光架橋アンチセンス法によるRISC制御に成功し、その一部は、学術論文として公表した。 以上の事由により、上記評価区分が相応しいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の狙いならびに進め方は、実績から判断して変更する必要はないものと考える。従って、今後の研究の推進は、実績項(1)~(5)の内容をさらに高水準に引き上げることと考えている。問題点としては、miRNAのような極微少量しか存在しないRNA(しかし、未知の生命機能制御機能を有する可能性が指摘されている)の検出に耐える検出システムの構築である。これまで培ってきた高感度RNA検出システムのグレードアップと並行して、検体RNAの高度濃縮系を考案し(10ミクロン程度のアフィニティ微粒子の利用を視野に入れている)、その両者の合一系により、極微量miRNA検出系を確立したい。 さらに、本申請研究成果の一般化を図るために、(a)外部刺激に応答するトランスクリプトーム解析、(b)金粒子担持プローブの細胞内局在の電子顕微鏡解析、(c)miRNA-RISCの検出、(d)ヒトパピローマウイルス由来RNAの検出(培養子宮頸がん細胞に限定して検討する)を試みる。
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