研究課題/領域番号 |
25620133
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊地 和也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70292951)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | pH感受性プローブ / 破骨細胞 / 二光子蛍光イメージング |
研究概要 |
破骨細胞は骨表面に吸着しプロトンやプロテーゼを放出することで骨吸収を行う細胞であり、関節リウマチなどの骨疾患に関係すると考えている。このため、その骨吸収メカニズムを明らかにすることは、破骨細胞の機能解明だけではなく、疾患治療の観点から極めて重要である。これまでに、pHの低下に伴い蛍光強度が上昇するプローブの開発を行い、マウス体内の骨表面で破骨細胞により酸性化した領域を二光子蛍光イメージングすることに成功している。一方、開発したプローブは、光安定性が低く長時間イメージングすることができなかった。そこで、本研究では、光安定性を高めたpH感受性プローブを開発し、マウス体内における破骨細胞の機能を長時間イメージングした。開発に先立ち、プローブの蛍光が消失する原因として次の二点を考察した。①低pH環境下におけるBODIPYの分解したことと、②励起状態のBODIPYおよび、活性状態の破骨細胞から生じる活性酸素種(ROS)による分解したことである。中性および酸性条件下におけるBODIPYの安定性を比較したところ、分解反応に対するpHの影響は無いことが確認された。したがって、ROSによる色素の分解反応が進行していると考え、今回新たにROS耐性を有するプローブの設計、合成を行ったところ、光安定性の向上が確認された。この新規プローブを用い、in vivo二光子蛍光イメージングを行ったところ、長時間にわたり骨表面の酸性領域を検出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破骨細胞が不活性な状態からプロトンを放出し骨吸収を行う活性状態に移行する過程を見るには、長時間イメージングすることが不可欠であった。一方、これまでに開発されているプローブでは、光安定性の問題からこの目的を達成することができなかった。今回、初めて、破骨細胞の活性化する状態を可視化することに成功し、その状態を長時間見ることに成功した。これは、光安定性を向上させた新規プローブの開発によって可能となったといえる。この結果、当初の目的を果たし、研究は、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivoで、より高感度にpH変化を検出できるプローブを開発する。そのためには、pH変化に伴い蛍光強度変化が大きくなる分子を設計するとともに、現在よりも長波長蛍光を放つプローブを開発する。厚みのある組織から蛍光検出するには、緑色蛍光よりも赤色蛍光を放つプローブの方が適している。そこで、pH変化に伴い、赤色蛍光を放つプローブを設計・開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、骨に結合するpH感受性蛍光プローブの開発を行い、破骨細胞の活性化に伴うpH変化を蛍光観測し学会にて発表する予定であったが、pH変化に伴う蛍光強度変化が当初の予測よりも大きくなるような蛍光色素の分子構造を発見した。そこで、この構造をもとにプローブを再設計することで、破骨細胞の活性化を高感度に検出できる可能性が生じ、この高性能プローブの合成・評価のための追加実験が必要となった 本年度の経費(848,054円)のうち、高性能プローブの有機合成に必要な試薬費として、340,000円、破骨細胞の活性を蛍光観測する実験に必要な細胞生物学・生化学試薬として308,054円、学会発表のための旅費として200,000円を支出する。
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