これまでに、pH感受性とヒドロキシアパタイト(HA)結合能を有する緑色蛍光プローブを開発し、そのプローブを用いることによりマウス体内の破骨細胞動態の可視化に成功している。このプローブは、骨表面に吸着し破骨細胞により引き起こされる骨表面上のpH低下を検出することができる。一方、プローブの蛍光波長領域が、GFPと同じ領域にあることから、GFP発現細胞との併用ができないことが問題であった。そこで、赤色蛍光を発しHA結合能を有するpH感受性BODIPYプローブを合成し、溶液中およびHA上における蛍光特性について検討を行った。pH感受性BODIPYプローブは、量子化学計算に基づきpKaが5.7程度でpH低下に伴い蛍光強度が上昇するように設計した。なお、このpKaは、破骨細胞によるpH低下を蛍光イメージングするのに適切な値であることが以前の研究より判明している。連続光照射実験を行ったところ、以前開発した緑色プローブと同様に褪色がほとんど確認されなかったことから、プローブの光安定性が高いことが分かった。また、pH滴定実験を行ったところpKaは5.8でpH低下に伴い蛍光強度が上昇し、当初設計に期待した通りの結果が得られた。プローブとHAを混合し洗浄後に蛍光顕微鏡で観察したところ、HAから赤色蛍光が観測されたことから、プローブはHA吸着能を有していることが分かった。以上の結果から、開発したプローブは、GFPよりも長波長の蛍光を発し、pH低下に伴い蛍光強度の上昇し、HAに吸着するプローブの開発に成功した。
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