研究課題
挑戦的萌芽研究
大腸菌リン脂質のみのリポソームには疎水性の高いペプチドは自発的挿入を起こすが、ジアシルグリセロール(DAG)を加えると自発的挿入が阻害されることが分かっている。DAGが膜流動性に与える影響を調べるために、脂質部をDラベルしたDAGを合成した。固体NMRで膜中に挿入された位置の運動性を調べるために、脂肪酸のγ位をラベル化することとした。市販の脂肪酸をエステル化し、D化メタノール中塩基処理によりα位をDラベル化した。エステルを還元してアルデヒドとした後増炭反応を行いγ位をラベル化した脂肪酸を得た。これをグリセロールに結合させて目的のDラベル化DAGを得た。固体NMRを測定したところ、MPIaseの添加により若干のシグナル変化が見られた。今後、MPIaseの含有量を増加させて比較する予定である。一方、大腸菌の生育培地を13Cグルコースのみとして培養しMPIaseの13Cラベル体を得た。基質ペプチドも合成した。糖鎖部の会合を調べるためにDOSY-NMRの測定を行ったところ、脂質部を有するMPIaseは水溶液中で会合していたが、脂質部を除いた糖鎖部だけでは、活性に必須のO-Ac基の有無に関わらず会合が見られない結果となった。
2: おおむね順調に進展している
ラベル化MPIase調製に炭素源を13C-グルコースのみとして培養したが、1回目は少量で精製できなかったため、予定が遅れた。現在はスケールアップして培養し、活性のある画分を十分量得て最終精製段階に至っており、NMR測定は可能と考えている。脂質のDラベル化は問題なく進行しており、固体NMRに供することができた。膜挿入するモデルペプチドは疎水性が高いため精製に苦労したが、固相合成時にキャッピングを施すことで不純物を低減させることができた。
DAGと同様に、D標識した脂質(ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG))を含む膜試料を調製し、D固体NMRによって調べることで、DAGおよびMPIaseの有無による標識脂質分子の運動性を解析する。DAGによる膜タンパク質膜挿入阻害およびMPIase添加による膜挿入の機構解明を目指す。合成したモデルペプチドと膜試料を用いて、13C標識MPIaseとペプチドとの磁気双極子相互作用からMPIase-ペプチド間相互作用を観測する。
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