研究課題/領域番号 |
25620137
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
島本 啓子 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, その他 (70235638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖脂質 / 膜挿入 / 膜タンパク質 / リポソーム / 生体膜 / 固体NMR |
研究実績の概要 |
これまでに、大腸菌由来リン脂質だけから調製したリポソームでは、疎水性ペプチドは自発的に膜挿入するが、生理的濃度のジアシルグリセロールが存在すると、自発的膜挿入が阻害されることが知られていた。ここに我々が同定した膜挿入因子MPIaseを加えると、濃度依存的に膜挿入が復活する。まず、31P-固体NMRで膜の相状態を確認したところ、DAGやMPIaseを加えても相状態には変化が無いことが分かった。次に、膜脂質(ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、DAG)の脂質部を重水素標識したものを合成し、重水素固体NMRを測定した。リポソームの重水素固体NMRは、Pake-Doubletと呼ばれる形状を示し、脂質部の運動性が大きくなるほど、その四極子分裂幅は小さな値を示すことが知られている。各々の膜脂質の四極子分裂幅を測定したところ、DAGを加えると運動性が低下し、MPIaseを加えることでその値が元に戻ることが分かった。変化の値としては小さいものであったが、温度変化に換算すると数度の差に相当することから、生体にとっては意味のある変化ではないかと考えている。また、PEとPGで挙動が少し異なっており、MPIaseとの相互作用に差がある可能性があるが、これについては更なる解析が必要である。最後に31PのT1測定により脂質リン酸部の運動性について調べた。DAGを加えてもほぼ変化が無かったが、MPIaseの添加により著しく運動性が上がることが分かった。MPIaseが脂質部やリン酸部の運動性に影響を与える原因が、頭部の大きさによるものであるか、ピロリン酸や糖鎖部の負電荷によるものであるか、今後モデル化合物を合成することで検証したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPIaseが膜の相状態や運動性に与える影響を観測することができた。
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今後の研究の推進方策 |
MPIaseが膜の運動性に影響を与える要因が、頭部の大きさによるものであるか、ピロリン脂質や糖鎖部の負電荷によるものであるかを明確にするため、部分構造を合成し、モデル化合物による影響を調べることで解析する。
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