研究課題/領域番号 |
25620140
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加納 博文 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60334166)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境負荷低減物質 / 柔軟構造 / 二酸化炭素吸着 / 分光法 |
研究概要 |
ELM-11は4,4'ビピリジンのメタノール溶液とCu(BF4)2水溶液から調製し、得られた粉末試料を石英管に入れ373Kで前処理したのち温度一定条件下で 異なる圧力のCO2を導入した。293 KにおいてCu2+の電子スピン共鳴スペクトルを測定した。Cu2+由来の特徴的なESRスペクトルが観測され、ELM-11のゲートオープン前後のスペクトル変化を解析した結果、gの垂直成分の強度はほとんど変化しなかったが、gの平行成分の強度はゲートオープニングとともに小さくなった。これらの結果を今後詳細に解析する予定である。また、CO2雰囲気下で ATR-IR 法の in situ 測定を行ったが、ATR法ではあまり良いスペクトルが得られなかった。そこでフッ化カルシウム窓で粉末試料を挟んで通常の透過法で測定した。ゲートオープニング前後におけるIRスペクトルの変化を詳細に分析すると、ゲートが開く前からいくつかのピークに変化が見られた。これらを総合的に解析することで、ゲート現象の機構を明らかにする手掛かりになるものと期待できる。蛍光分光装置を早い段階で購入し、CO2 雰囲気下での in situ 蛍光測定行ったが、発光強度が微弱であり、ゲート現象をモニターするには困難であった。 また、酸化黒鉛を調製し、2種類程度のアミン系分子を層間に挿入したコンポジットを調製し、X線回折測定やIR測定を行い、アミン系分子が導入されたことを確認した。273 K における純粋CO2ガスの吸着等温線を測定したが、CO2の吸着性の向上はほとんど見られなかった。しかし、水蒸気とCO2の混合ガスではある程度のCO2吸着が見られた。炭酸の形で吸着しているものと考えられた。今後より多くのアミン物質を層間に導入することで、改善するものと期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ELM-11のゲート現象に伴うESRスペクトルおよびIRスペクトルの変化を捉えることができ、ゲート現象の機構についての情報が得られた。現在、これらの変化について解析中である。また、酸化黒鉛に一定量のアミン物質を導入し、水蒸気存在下でCO2吸収機能を促進させる効果を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
ESRスペクトルおよびIRスペクトルの変化を捉えることができたので、さらにNMR測定を行うことで、これら分光データを総合的に検討し、ゲートが開く機構を理解する。一方、酸化黒鉛に多くのアミン系物質を導入したり、メソ細孔性炭素の細孔にNa2CO3やK2CO3を導入したりして、ナノ構造化し、ゲート現象による効率的CO2吸着を示す系を見出す。ゲート現象をシミュレーションによって研究しているグループとのディスカッションにより、これら機構について議論し、理解を深める。
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