研究実績の概要 |
昨年度は、水中プラズマ発生装置を栗田製作所からレンタルして、カーボンナノチューブ(CNTs)の表面に酸点付加の実験を行った。しかし、この装置はレンタル期間が過ぎたため返却し、今年度は、3つの異なる化学的酸化法を用いて酸点付加を試みた。それは、(1) 過硫酸カリウムによるCNTsの表面酸化、(2)過酸化水素によるCNTsの表面酸化、(3)混酸によるCNTsの表面酸化の、3つである。それぞれ酸化反応実施後のCNTsに純水を加えたサンプル瓶を、超音波で分散処理した。直後はどれも一様に純水に分散しているが、1日以内に、未処理のCNTsと(1)過硫酸カリウム処理したCNTsは沈殿してしまったが、(2)過酸化水素処理したCNTsと(3)混酸処理したCNTsは二か月後でも分散したままで沈殿しなかった。このことから、(2)過酸化水素法と(3)混酸法でCNTsの表面に親水性官能基が形成されたことが強く指示された。このことを確立するために、ラマンスペクトル測定を行った。混酸法のCNTsのD-bandの強度が一番増加したことが分かった。この結果から、混酸処理によりCNTs表面の炭素原子の結合状態がsp2結合からsp3結合に変化したことが分かる。さらに、X線光電子分光(XPS)測定により、287.2eVと288.9eVのピークは、それぞれ、カルボニル基由来とカルボキレート基由来するピークである。このことから、混酸処理により強磁性CNTsの表面に-OH , -COOHといった含酸素官能基の導入されたことが確認された。今年度は、混酸による表面酸化までで終わってしまったが、今後、この酸点付加した強磁性CNTs を用いてセシウム金属の吸着と脱着の研究を進めたい。
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