研究課題/領域番号 |
25620145
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
川本 達也 神奈川大学, 理学部, 教授 (20204787)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水素生成触媒 / 酸素生成触媒 |
研究概要 |
多電子移動型錯体としてノンイノセントな配位子を有するニッケル錯体を合成し、それを可視光による水から分子状水素への変換システム(犠牲剤としてEDTA-2Na、光増感剤としてRu(bpy)3、電子伝達剤としてメチルビオロゲンを使用)における水素生成触媒として使用した。その結果、ターンオーバー数(TON)は低いもののニッケル錯体が触媒として機能することを明らかにした。また、光増感剤をRu(bpy)3からIr(ppy)2(bpy)に置き換えたところTONの著しい向上がみられた。この新しいシステムは電子伝達剤を必要としないこともあり、今現在、この新システムをベースとして、さらに高効率なニッケル錯体触媒の開発を試みている。同時に、新たな光増感剤としてシクロメタレート型白金錯体の開発を試みた。その結果、数種の新規白金錯体の合成に成功し、白金コロイドを触媒とする変換システム(犠牲剤としてTEA、電子伝達剤としてメチルビオロゲンを使用)に適用したが、白金錯体そのものに分解傾向がみられた。そのため、今現在はイリジウム錯体においてIr(ppy)2(bpy)に代わる光増感剤の開発を行っている。 一方、水の分子状酸素への変換システムの開発においては、当初計画したルテニウム単核錯体の合成に成功し、その錯体を触媒とするセリウムを用いた水の酸化反応において酸素と思われるガスの発生を目視できたが、再現性が十分取れなかった。そのため、その後は新たなルテニウム錯体の開発を試み、その結果、数種の新規ルテニウム錯体の合成に成功した。その中でも水から酸素を生成するために必要と考えられている水分子が配位できるサイトを有する非対称な二核構造のルテニウム錯体は、水の酸化反応における触媒作用が期待でき、今後はこの錯体を中心に酸素生成触媒の開発を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多電子移動型金属錯体が、可視光を用いた水の分子状水素への変換反応の触媒として機能することが示せたことから、大きな目的のひとつは達成できたと考える。より優れた触媒開発が次の課題である。 一方、光増感剤および水の分子状酸素への変換反応における錯体触媒の開発については、まだまだ十分な成果を上げたとは言えない。しかしながら、これまでの研究によりカギとなる化合物が得られたことから、今後はそれら化合物を中心に研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ノンイノセントな配位子を有するニッケル錯体を中心に、より優れた水素生成触媒を開発する。また、ニッケル以外の安価な金属を用いてノンイノセントな配位子を有する錯体を合成し、その触媒としての能力を明らかにする。 当初、新たな光増感剤としてシクロメタレート型白金錯体の開発を目的としたが、反応系中における安定性に欠けるため、今後はイリジウム錯体を中心に新規光増感剤の開発を目指す。 水の分子状酸素への変換反応においては、触媒活性が期待できる新たなルテニウム錯体が合成できたことから、その錯体を中心に研究を進める。
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