分子の酸化還元反応は、電子の授受と同時に、局所的な分子内の電子状態の変化や分子の構造変化を伴う。これは電気化学計測ぬ加えた新たな研究手法の発展により明らかにされてきている。本研究課題は、分子内の電子移動過程を電気化学的・振動分光敵な両側面より検討しようとする萌芽的研究課題である。昨年度までに構築してきたその場ラマン分光装置を用い、銀電極界面に存在する水分子のダイナミックスについて検討を行った。この水分子は、電気二重層内に存在する数層程度の水分子であると考えており、この水分子の電極電位依存性について詳細な解析を行った。電極電位の変化に伴い、電極界面に存在する水分子のラマンスペクトルの変化が観測された。特に、卑な電位領域において水分子のラマン強度が大きく観測された。本研究課題では、水分子のライブレーションに焦点をあてて研究を遂行し、電極界面における水分子のライブレーション振動モードは卑な電位ほど散乱強度が大きく観測されている。この散乱強度の増大は、これまで報告している変角振動、対称伸縮振動、逆対称伸縮振動などの水分子と同様の傾向を示していることが判明している。さらに、アルカリカチオンの影響についても検討を行った。Li、Na、K、Rb、Csと質量数が大きいアルカリカチオンを電解質として用いると、ライブレーションの散乱強度が減少した。この結果は、電極界面に存在する水分子は、アルカリカチオンの影響を大きく受け、アルカリカチオンに水和している水分子をラマン測定にて観測していると想像できる。
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