研究課題/領域番号 |
25620147
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 滋 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40192447)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光エネルギー変換 / ベシクル / 二酸化炭素光還元 |
研究概要 |
本研究は、光エネルギー変換機能をもつベシクル反応系に流動システムを導入することによって、その反応効率と拡張性を高めようとするものである。当初は、初年度に流動システムを設計・製作する計画であったが、製作の参考にする既存の流動システムがそのままでは本研究には適用できないことが判明し設計を変更する必要が生じたこと、および本反応系を評価するために必要となる光エネルギー変換機能をもつベシクル反応系を確立させることが急務であると判断したことから、本年度はおもにベシクルを反応場とする光反応に重点をおいて研究を進め、その結果、以下に示すような顕著な実績を挙げることができた。 当初計画していたアスコルビン酸を電子供与体、ピレン誘導体を増感剤、白金錯体を触媒に用いたベシクルを反応場とする光水素発生系については、新規錯体の合成など様々な反応条件を検討したが、反応効率を高めることができなかった。そこで、同じ電子供与体を用いて、ルテニウム触媒を増感剤、レニウム錯体を触媒とする二酸化炭素光還元系に注目し、その反応系の構築に鋭意取り組んだ。長鎖アルキル基をもつ新規増感剤と触媒の合成、電子供与体や触媒濃度の反応効率に及ぼす影響の検討などにより、最適な反応条件を求めた結果、可視光を用いて高い触媒回転数で二酸化炭素を一酸化炭素に還元するベシクル反応系の構築に成功した。この結果は、英国の光化学専門誌に投稿し、論文査読者から高い評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、申請者が従来から研究対象としているベシクルを反応場とする光エネルギー変換系の構築に対して、流動システムを導入することを着想し、その製作に挑戦しようとするものである。申請者は流動システムに関しては全く経験がなく着想のみから研究を開始したこと、また当初の設計に変更を加える必要が生じたこともあり、目的とする反応系の作製に至っていない点で、研究はやや遅れていると評価せざるを得ない。しかし、ベシクルを反応場とする光エネルギー変換系の構築という観点からは研究は大きく進展しており、本研究で挑戦しているシステムが製作できれば、それを評価する態勢は整ったということができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である流動システムを導入するための反応容器の試作を進め、同時に、ベシクルを反応場とする光エネルギー変換系の高効率化と高機能化を推進する。流動システムの試作については、類縁の流動システムを製作した経験をもつ研究者の協力を積極的に仰ぐ計画である。既存の流動システムではベシクルの形態を維持できることは知られているが、それに光照射と気相部分を回収する機構を組み込むことが課題であり、これについては試行錯誤により対応していく。特に、当初は光照射に石英ファイバーを使用する計画であったが購入が困難となったため、他の照射方式を検討する必要が生じている。ベシクルを反応場とする光反応系については、光水素発生系の高効率化に重点をおき、流動システムに使用できる反応系の開発をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付された助成金額の範囲で、研究の遂行に必要な小額備品、合成用試薬、およびガラス器具を購入した結果、若干の余剰が生じたため。 本研究の遂行には、物質合成やスペクトル測定のための試薬や溶媒、およびガラス器具、さらに反応容器の作製のための部品など、消耗品に十分な経費が必要となる。次年度の助成金もおもに、小額備品と消耗品を購入する予定であり、今年度生じた次年度使用額と併せて有効に使用する計画である。
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