研究課題/領域番号 |
25620151
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐野 庸治 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251974)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゼオライト膜 / CHAゼオライト / ゼオライト転換 |
研究概要 |
アモルファスゲルを出発原料に用いる8員環細孔(約3.8オングストローム)を有する高シリカCHA型ゼオライトの合成には、通常、有機構造規定剤(OSDA)として高価なN,N,N-トリメチルアダマンタアンモニウムカチオン(TMAda+)が用いられる。しかし、ゼオライトを出発原料に用いたゼオライト合成、ゼオライト転換により、安価なベンジルトリメチルアンモニウムカチオン(BTMA+)存在下で、FAU型ゼオライトから高シリカCHA型ゼオライトが効率よく得られることを見出した。本ゼオライト転換法で得られたCHA型ゼオライトは、硫酸処理後の相対結晶化度は高く、また脱アルミニウムの進行によるSi/Al比の増大が小さかった。OSDAにTMAda+を用いて得られたCHA型ゼオライトは格子欠陥が多く、そのため耐酸性が低いことを明らかにした。 ゼオライト転換法CHA型ゼオライトが耐酸性に優れていることが分かったので、本手法によりCHA型ゼオライト膜の調製を行った。CHA型ゼオライト膜の分離性能は、1700時間後でも透過流速および透過液中の酢酸濃度がそれぞれ8 kg m-2 h-1および0.05 WT%以下であり、現在実用化されているLTA型ゼオライト膜と同等の値であった。 以上の結果から、本高シリカCHA型ゼオライトは従来法のものに比べ高い耐酸性を有していること、およびその膜は水/酢酸系の浸透気化分離において高い分離性能と耐久性を有しており、十分に実用化レベルに達していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水/酢酸系の浸透気化分離において、透過流速および透過液中の酢酸濃度が1700時間の長期耐久試験後においてもそれぞれ8 kg m-2h-1および0.05 WT%以下という実用化レベルの安定した分離性能を示すCHA型ゼオライト膜の合成に成功した。FAU-CHA型ゼオライト転換に及ぼす有機構造規定剤(OSDA)の影響について検討した結果から、この高耐酸性はゼオライト結晶中の格子欠陥量が制御されたことに起因することを明らかにした。すなわち、OSDAにN,N,N-トリメチルアダマンタアンモニウムカチオン(TMAda+)の代わりにベンジルトリメチルアンモニウムカチオン(BTMA+)を用いて得られたCHA型ゼオライトは、格子欠陥が少なく、このことが耐酸性の高さの原因になっていることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本高シリカCHA型ゼオライトは従来法のものに比べ高い耐酸性を有していること、およびその膜は水/酢酸系の浸透気化分離において高い分離性能と耐久性を有しており、十分に実用化レベルに達していることが明らかとなった。しかし、現時点ではゼオライト膜の製膜に1週間の結晶化時間を要しており、今後はその製膜時間をいかに短縮できるかが工業化の大きな課題である。そのため、この結晶化時間低減のための合成条件の詳細な検討をするとともにCHA型ゼオライト膜以外の様々な8員環ゼオライト膜の合成と分離性能についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開始直ぐに高性能なCHAゼオライト膜が得られたので、その膜の詳細な物性評価と脱水性能の耐久性試験を行った。その結果、当初予定していたCHAゼオライト膜の調製条件の検討が十分にできなかった。 CHAゼオライト膜以外の8員環ゼオライト膜の調製と脱水性能の長期耐久性試験を行う。
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