研究実績の概要 |
β-パイロクロア型酸化物AB2O6は、大きなかご状の構造中に小さなAカチオンが内包された結晶構造を持つ酸化物で、内包原子の非調和振動が超伝導を誘起するとして注目されているが、熱的特性に関する知見は乏しい。第2年度となる本年度は、かご状構造骨格への導電性の付与を目的として、Bサイト原子としてTeやSbを含有するAAl0.33M1.67O6 (A=K, Rb, Cs, M=Te, Sb)などを合成し、熱電特性を検討した。AAl.033Te1.67O6の導電率は、450℃で10-2 S/cmのオーダーであり、熱電変換材料としては十分とはいえないが、β-パイロクロア系酸化物について報告されている導電率としては最高レベルの値である。この点については、今後、Bサイト原子としてSbやBiを用いた物質合成を検討する。また、Aサイトの少量置換による酸化物骨格への変調ドーピング(ドーパントとドープされる場所が空間的に離れているドーピング)を検討する。Bサイトの部分置換による結晶構造の対称性の向上、金属-酸素配位多面体の対称性の向上についても引き続き検討する。一方、試料の振動スペクトルについては、ラマンスペクトルの測定を行い、ラトリングに帰属されると思われるピークを確認した。詳細な解析は次年度に行う。
|