二酸化炭素を電気化学的に還元し,メタンなどエネルギー源を生成することができれば,カーボンニュートラルなエネルギーシステムを構築でき,さらに既存のエネルギーインフラや装置を利用できる。これまで,銅を電極に用いることで,電気化学的還元によってメタンが得られることが報告されていたが,過電圧が大きく,実用的ではなかった。本研究では,過電圧の要因として考えられている,二酸化炭素分子の活性化に着目し,ルイス塩基を用いることで,反応中間体を安定化させることを試みた。 平成25年度はルイス塩基としてピリジンを添加した系に対して系統的に評価を行った結果,ピリジン濃度によって,反応活性が変化することがわかり,ピリジンが銅電極に吸着することが示唆された。そこで平成26年度は,ピリジンに加えて種々のアニオン性のルイス塩基を添加して,その効果を検証した。その結果,二酸化炭素を飽和させた電解質溶液中にトリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3-)を添加すると,-1.2 V (vs. Ag/AgCl)で,特異的に水素の生成量が低下し,メタンの選択率が高くなることが分かった。系統的な実験より,添加されたルイス塩基は,二酸化炭素分子の活性化よりも,水素発生の抑制に寄与していることが明らかになった。従来は,多量の水素が発生するために,メタン生成への水素の反応が抑制されていたが,水素発生を抑制した結果,過電圧が-0.6 V程度という,従来になく低い過電圧でメタン生成が進行し,また選択率が向上したと結論付けた。
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