研究課題/領域番号 |
25620154
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田所 誠 東京理科大学, 理学部, 教授 (60249951)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水クラスター / 相転移 / ガスハイドレート / 金属錯体 / 超分子 / 水素結合 / 電解質 / 構造科学 |
研究概要 |
私たちは、不安定なGas-hydrate (GH) を安定化するため、必要な低温・高圧をナノチャネル細孔で補ってやることを計画した。そして、内部に安定化される水分子クラスター(Water Nanotube: WNT)は、人工的なGH として取り扱い、エネルギーガスなどの臨界液体を常温常圧で貯蔵する材料の開発を目指した。このGH の部分構造を多孔質空孔内で再現・安定化することによって、臨界ガスのH2 やCH4 をGH の氷化する温度で大量に吸蔵できると考えられる。安定な人工CH 構造をつくる設計は、GH のような不安定な空孔構造をもつ氷を安定化させるために親水性の外壁をもつナノチャネル細孔をつくることが重要である。その結晶中に安定化されたWNT の中心部位の水分子のみ取り除くことで、チューブ状のWNT を構築し、この中空構造のWNT に対してガスを注入し、人工GH を安定化しようとするものである。私たちが合成したナノ多孔質結晶は、相補的な水素結合から作られており、自己組織化による合成法によって、ミリメートルオーダーの単結晶を簡便につくれる。ガス吸蔵実験に用いられる結晶は3 次元的なネットワ-クによって連結された{[RuIII(H2bim)3]2(TMA)2 30H2O}n(3)であり、これらは湿度条件をコントロールすることでナノ空孔構造を大気下でも安定に維持できる。この3 を温度と湿度を変化させてWNT の中心付近の水分子のみ蒸発させた中空構造のWNT を調整し、3 の結晶にガスを吸蔵させる予定である。まず、はじめに簡便なXe-hydrate の構築を目指し、生成は129Xe-NMRの温度変化で確認するつもりである。CH4 の導入については高圧下での取り扱いが必至なために、主に水とCH4 の圧力を同時に制御できるところとの共同研究を予定しているが、まだ実施状況にない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この分子性多孔質結晶に安定化されたWNT が、CH と同じようにTHF-hydrate(TH)のような低分子の溶媒を取り込んだCH をつくることをみいだした。モル比でTHF/H2O = 1/17 の割合をもつ溶液からTMA3-と[RuIII(H2bim)3]3+の結晶{[RuIII(H2bim)3]2 (TMA)2.30H2O.3THF}n(2) が得られた。253 K でのX線構造解析によって同様な3次元ネットワークを有する骨格にWNT を形成することが分かった。クラスター構造はX線結晶構造解析で第2 水和層までしか確認できなかったが、WNT の単位構造の内部には3 分子のTHF がディスオーダーして挿入された人工的なTH を生成していることが分かった。、内部のTH をすべて真空中で完全に除去しても、大きな空孔構造を大気下で単結晶として維持できることが分かった。おもしろいことにこの高真空下での結晶は、大気中の水分子を吸着して、多孔質結晶を安定化している。ガスをWNT に入れる場合には、湿度50%でこの結晶を3時間大気中で放置しておくとTHF分子のみ希散させることができ、穴の空いたハイドレートを作ることが可能である。このWNTに穴を開けることでガスが自由に出入りすることができるようになり、穴を開けない場合にはガスを取り込むことはない。Xeなどのガスの取り込み実験を行った結果、低圧でも高圧でもXeを取り込むことが分かった。おもしろいことは低温で凍らせた場合にはガスを取り込むことができ、室温でとけたWNTになっているときにはガスを取り込ませることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、常圧・低温の条件で最もGH 構造をつくりやすいXe-hydrate(XeH)をつくるXe ガスを用いて、結晶3 のGH 構造が合成可能かどうか確かめた。調湿効果を想定した場合にはキャピラリー型の封入管に飽和電解質溶液(例えば湿度76%をもつMeCOONa 飽和溶液の蒸気)と結晶をサンプリングして、Xe ガスを封入する。この結晶の温度変化を行い、XeH の生成を確認するつもりである。この確認は固体での129Xe-NMR の測定を行い、結晶内に挿入されたXe ガスが、キャピラリー内でXeH になったかどうか確認する。さらに、ナノ空孔内に取り込まれたXeHのものを緩和時間の違いによって見分けることができるであろう。実際にXeガスを封入してみたところ新たなクラスレートハイドレートと思われるピークがXe NMRに出現することが明らかになった。すでに、129Xe-NMR 研究例は抱負に存在するため、過去の論文例などを参考に東京理科大学機器センターに設置されているCMX-300 固体専用NMR 装置で引き続き測定を行う予定である。またメタンなどについては、サンプリングは可能であるが、13C-NMRでの測定を行い胸像の確認を行うつもりであるが、高圧になるため実験的なノウハウが必要で有り、すぐには測定できそうもない。そのため、ブタンなどの液化しやすいガスを使った取り組みを行っているところである。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入計画していた薬品を使用した実験が、今年度中にはできなかったため 消耗品費などに使用予定
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