研究課題
本研究計画の目的は、有機太陽光発電材料における電荷移動機構をミュオンスピン緩和法で調べることにある。国内企業や海外の大学・研究所と連携をとり、PolythiopheneやPC71BM、PTB7といった将来性のある有機材料や新規合成される有機材料を用い、パルス状ミュオンを活用することによって材料内の電荷移動の次元性や速度を明らかにすることにあった。有機太陽光発電材料物質として極めて有望と目されているP3HT,PCBM,ZnOなどのナノ粉末試料を合成し、フラッシュランプを照射する光照射μSR測定を実施した。その結果、ナノ粒子表面よりもやや深い部位に停止するミュオン粒子の停止位置においても、光励起電子によるミュオンスピン緩和を観測することができた。この結果は、太陽光発電時における光励起電子のダイナミクスの研究にμSRが有効であることを証明し、これまで実施されていなかった、微視的研究ツールによる光励起電子のダイナミクスの解明への道を開いた。一方、試料中でのミュオンの位置を解明することが、光励起電子の伝導速度等の定量的解析に重要であることが改めて認識された。これは、本研究計画に関わって新に発生した研究課題であり、μSR研究全般の高度化に関わる開先手法であることが確認された。本研究計画の付加的成果といえる。そこで、μSR測定を継続するとともに、密度汎関数法による結晶内の電場ポテンシャル計算を展開し、測定対象試料中のミュオン位置を探る計算手法の開発に乗り出した。この計算手法は、現在、他のμSR測定試料にも応用されつつあり、ヨーロッパ・アジアの研究グループとの連携を立ち上げるきっかけを創出した。今後、測定手法的研究と計算研究手法をタイアップさせることにより、より幅広い研究展開を図ることが可能になった。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
Advanced Materials Research
巻: 896 ページ: 477-480
J. Phys. Conf. Ser.
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