研究実績の概要 |
ベンゼンやピレンなどに複数のテトラデシルアミド基(-CONHC14H29)を導入した誘導体の分子会合特性、分子集合体形成および分子間水素結合に由来する強誘電性の発現に関する検討を行った。最初に、異なる側鎖の数と置換位置を有する5種類のベンゼン誘導体に関する系統的な検討を行った。また、機能拡張の観点からピレンに4本の-CONHC14H29鎖を導入した新規化合物を合成し、その分子会合能、光物性および強誘電体物性に関する検討を行った。強誘電性の出現は、アルキル鎖の分子運動が激しい中間層におけるカラム内の分子間アミド結合の反転による分極反転から生じたと考えられ、分子内N-H~O=水素結合と立体障害により支配される。ベンゼン誘導体で得られた知見を元に、強誘電性と発光挙動の出現が期待できるアルキルアミド置換ピレン誘導体はCoh相を示し、電場-分極ヒステリシス曲線に強誘電体に特徴的な挙動を示した。分子間アミド結合を利用した分子集合体の設計と機能開拓は、多重機能性材料の創製に有効なアプローチである。次に、アルキルアミド置換ジベンゾ[18]crown-6誘導体を新規に作製し、その基礎物性およびイオン包接と連動した新たな機能の開拓を目指した研究を行った。クラウンエーテル誘導体は、 CHCl3, Toluene, DMFおよびDMSO などの有機溶媒中で透明なオルガノゲルを形成した。480 Kに固相-液晶相転移に対応するピークが観測され、液晶-等方性液体転移は520 K付近で生じた。液晶状態におけるXRDと温度可変偏光顕微鏡観測から、ディスコチックカラムナー相の形成が示唆された。4本のアルキルアミド鎖が互いに分子間水素結合を形成し、かつベンゼン環がスタックしたカラムナー構造の形成は、[18]crown-6部位の一次元配列によるチャネル構造の形成を示唆している。
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