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2013 年度 実施状況報告書

共役系有機・高分子ナノファイバーの創製:高導電性から超伝導体へ

研究課題

研究課題/領域番号 25620157
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東北大学

研究代表者

及川 英俊  東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60134061)

研究分担者 小野寺 恒信  東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10533466)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードポリジアセチレン / ナノ結晶 / ナノファイバー / 再沈法 / 配向薄膜 / ドーピング / 導電性 / 超伝導体
研究概要

本年度は、再沈法により、合成した両親媒性ジアセチレン(Am-DA)およびカルバゾイル基(Cz基)を有するDA(Cz-DA)のナノファイバー(NF)の作製とその固相重合によるポリジアセチレン(PDA)への変換を行った。さらに、独自の移流集積法を用いたPDA-NFの配向薄膜化を達成するとともに、この配向薄膜に対してのヨウ素ドーピングの予備実験にも着手した。
1.合成したAm-DAはDA部位の片末端がアルキル鎖長(炭素数:12)、もう一つの片末端はアルキル鎖(炭素数:8)を介してアミド基と2級アミノ基が結合した分子構造である。Am-DAのアミド基間に分子間水素結合が形成される。一方、Cz-DAはDA部位の両末端がCz基である。Cz-DA のCz基間には分子間π-π相互作用が誘起される。
2.再沈法で作製した Am-DAおよびCz-DAのNFは良好な固相重合性を示し、Poly(Am-DA) NFの励起子吸収は青相から赤相へ相転移した。また、この相転移には明らかな固相重合温度の依存性が認められた。一方、Poly(Cz-DA) NFの励起子吸収は先鋭で、青相のみを与えた。
3.TEMおよびSEM観察から、Poly(Am-DA) NFは中空構造(内径:約20 nm、外形:約62 nm、長さ:約1μm)となり、また、Poly(Cz-DA)は典型的なNF(直径:約50 nm、長さ:約1μm以上)を与えた。
4.メニスカス後退を利用した改良型Tapered Cell法を考案し、Poly(Cz-DA) NFの配向薄膜の作製に成功した。基板傾斜角の最適化により、配向秩序度S = ca. 0.85を達成した。この値は液晶分子のS値に相当する。一方、水溶性高分子の添加による増粘作用は逆効果で、S値の減少が見られた。
現在、Poly(Cz-DA) NF配向薄膜のヨウ素ドーピングを行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の達成目標は、結晶格子構造の剛性制御、配向薄膜の作製、ドーピングと導電率評価である。
Poly(Am-DA) NFは両親媒性DAの分子構造由来のSoftな結晶格子を有する。固相重合過程で生じる永久歪みが蓄積された結果、PDA鎖の有効π-共役長が長い青相から短い赤相へ相転移する。すなわち、結晶格子構造は若干Disorderとなる。一方、Poly(Cz-DA) NFはCz基間の強固な分子間π-π相互作用のために、Hardな結晶格子を取る。そのため、固相重合過程での相転移は生じない。このように、DA分子の合目的な構造設計により、対応して得られるPDAの結晶格子構造の剛性制御が可能なことを明らかにした。
また、Poly(Am-DA) NFは中空構造を取っており、これは配向薄膜におけるチャネル構造(ドーパントの自己拡散層)としての機能が期待される。本来、Poly(Am-DA) NF配向薄膜においては、そのアルキル鎖部位をPDA主鎖間の中間相(ドーパントの貯蔵・拡散層)として想定した分子設計ではあったが、形成される中空構造とともに、二重のチャネル構造となり、高濃度のドーピングが期待される。
一方、改良型Tapered Cell法の採用によって、非常に簡便にPoly(Cz-DA) NFの配向薄膜の作製に成功した。配向度は温度や湿度と関連するメニスカスの後退速度が大きな因子となり得るが、結果的に基板傾斜角に大きく依存したことは、この手法の制御性高さを示している。
さらに、Poly(Cz-DA) NF配向薄膜のヨウ素ドーピングの予備実験に着手した。
以上の研究成果および本年度の達成目標から、達成度は「概ね順調」と判断される。

今後の研究の推進方策

最終年度は、改良型Tapered Cell法によるPoly(Am-DA) NF配向薄膜の作製、各種のドナーおよびアクセプタードーパントの選択とドーピング条件の最適化(真空度や暴露時間など)、SEM/TEM(元素マッピングを含む)、SAXS、WAXS、XPS、IR、Raman分光などによるドーピング後の結晶格子構造解析、四端子法による導電度測定と作製プロセスへのフィードバックを系統的に推進する。一方、当初の研究計画調書には記載されていなかったが、界面ドーピングの手法も新たに導入し、検討を加える。いずれにしてもドープ量の正確な定量とドーピング後の結晶格子構造を介した電子構造の把握が極めて重要であり、導電機構の解明には必須であると考える。
また、高ドープ状態におけるPDA NF配向膜の線形・非線形光学特性の評価(光消失スペクトルやPump-probe法)を行う。ドープされたPDA NF配向膜は「広義のハイブリッドナノ材料」であり、共役系高分子と無機物質とのヘテロナノ界面における光・電子的相互作用の理解に重要な知見を与える。
さらに、超伝導体「Littleの励起子機構モデル」を念頭においたCz基の選択光励起や電子線照射によるカスケード現象の確認などは、特にNIMSの連携研究者との綿密な共同研究として、NIMSの共用施設やファシリティーの活用も含めて進める。
最終年度、以上の研究計画を推進することで、当初の研究目的・目標の達成を図る。

次年度の研究費の使用計画

研究計画の変更は伴っていない。すなわち、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
未使用額は平成26年度請求額とあわせ、NIMSとの共同研究がより重要となる平成26年度の研究遂行に重点的に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 光デバイスへ向けた有機・ハイブリッドナノ結晶材料の創製

    • 著者名/発表者名
      及川英俊
    • 学会等名
      GIC平成25年度第34回研修セミナー
    • 発表場所
      産総研 東北センター

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公開日: 2015-05-28  

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