前年度の成果を基に、今年度はさらに様々なナノポーラスカーボンの開発に取り組んだ。ここでは、代表的な成果として、グラフェン層間にシリカピラーを有するナノカーボン (ピラー化炭素) および金属-有機構造体 (Metal-Organic Framework; MOF) を鋳型としたメソポーラスカーボン (MOF-Templated Carbon; MTC) の作製とその固体電気化学特性について述べる。 (i)ピラー化炭素:酸化グラフェン (GO) とトリクロロメチルシランを反応させることにより、シリル化GOを得、その後、得られたシリル化GOを高温で加熱することにより、ピラー化炭素を得ることに成功した。また、GOのシリル化反応の回数を増やすことにより、GO層間のピラーが伸長することを明らかにした。このようなピラー化炭素の電気化学特性を測定したところ、シリル化反応回数3回のものがもっとも大きな電気二重層容量を示すことを見出した。 (ii)MOFを鋳型としたメソポーラスカーボン:架橋配位子であるテレフタル酸と亜鉛イオンからなる既知のMOFを作製し、これを高温で加熱して炭化させた後、塩酸処理により酸化亜鉛を取り除き、MTCを得た。このMTCはメソ孔 (2~50 nm) を有するとともに、比表面積が1060 m2g-1であることを明らかにし、SWNTやグラフェンよりも高表面積なナノカーボンの作製に成功した。さらに、作製したMTCと分子クラスターの一つポリオキソメタレート(POM)をナノ複合化し、その電極特性を測定したところ、他のナノカーボンとPOMからなるナノ複合体よりも大きな容量を示すことを見出した。 このように、グラフェン層間を拡張したピラー化炭素や細孔を有するMTCを作製し、その固体電気化学特性を検討することで、ナノポーラスカーボンが電極材料として有用であることを明らかにした。
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