研究課題/領域番号 |
25620161
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 一生 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90435660)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオン液体 |
研究概要 |
本研究では、立体的な核に複数のイオン対が結合した骨格を有するイオン液体の合成と、それらのナノ構造由来の機能発現を目的とする。イオン対の熱物性(融点、熱分解温度)を調べることで、立体核に結合させる効果やナノ構造の物性に対する寄与を明らかにした。応用として、既存のイオン液体の熱物性のみを向上させる添加剤(フィラー)開発を行った。また、イオン性液晶を形成させ液晶として振る舞う温度領域の拡張について検討した。さらに、イオン液体中に色素を添加し、ナノ構造を利用した配列制御を行った。この効果により特異な光学物性の発現を狙った。 イオン液体(融点が100 °C以下の塩)開発において、一般的に分子量が増加すると融点も上昇する傾向がある。一方、申請者はこれまでにPOSSと呼ばれるシリカの立方体構造を有する分子を複数電荷アニオンとし、各頂点にイオン対を配置すると、それらの融点が低下するのと同時に、熱分解温度が上昇することを見出した。その機構として、融点降下はPOSS核によりイオン対間の相互作用が低下したためであり、分解温度上昇はイオン対が液体状態であっても、規則的に配置させられていることを示唆する結果を得た。さらに、イオン性液晶を形成させることに成功し、特に、このPOSSを用いたイオン性液晶は等方相転移点が分解温度以上にあるという非常に熱的に安定な液晶状態を形成することが分かった。本研究では、これらの知見に基づき、まず立体核がイオン液体の熱物性に及ぼす影響についての一般性について検証した。さらに、応用として汎用性イオン液体の熱物性向上のためのフィラー開発、液晶としての温度領域の広いイオン性液晶、発光色素の規則的配置について研究を展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
A. 耐熱性POSSイオン液体の合成 従来のカルボキシPOSSの熱分解機構から、カルボキシル基における脱炭酸が最初に進行していることが明らかとなっている。この知見をふまえ、より熱的に安定な強酸性基を含むPOSSの合成を行った。具体的には、汎用的なイオン液体として使用実績のあるスルホン酸とリン酸について、これらの官能基を末端に有する八置換POSSを合成した。現在、スルホン酸POSSの合成と、メチルブチルイミダゾリウム塩を用いることでイオン液体となることを確認している。スルホン酸部位とイミダゾリウム上のアルキル基の長さや分岐導入を行うとともに、リン酸POSSの合成も進めた。 B. アダマンタン核含有イオン液体の合成 目的の物質を得るために合成を進めた。現在、一、二、四置換カルボン酸体まで合成を完了している。三置換体の合成、並びにスルホン酸やリン酸体の合成も行った。 C. 機能性分子核含有イオン液体の合成 目的の物質について、POSSと同様にイオン液体化を図った。それぞれ高純度のカルボン酸体を合成し、イミダゾリウム塩と酸塩基中和反応でイオン対を形成させた。デンドリマーや剛直な主鎖を有するポリフタル酸は本研究手法が高分子のイオン液体化が可能であることを示す意義がある。また、フルオレンについては、高輝度発光性イオン液体としての機能を期待し、実際発光を得た。当該年度は共通して化合物の高純度化が最大の課題であった。上述の酸塩基中和反応により水が生成する反応の他に、炭酸やアンモニアなど揮発性物質が生成する反応についても検討した。これらの方法では、水の場合と同様、凍結乾燥により副生成物を除去することが可能であるが、原料自体も塩として得ることができることから、高純度化が容易であった。
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今後の研究の推進方策 |
得られたイオン塩の熱物性の評価を行う。融点、融解時の熱力学的パラメータをDSCにより算出する。イオン対引きはがしの効果は融解エンタルピー変化の減少より評価する。また、熱分解温度をTGAにより算出する。質量欠損を分子量基準に算出することで分解機構を調べる。 A. 液晶挙動の調査 C14以上の直鎖アルキル基を有するイミダゾリウム塩とイオン対を形成させることで、イオン性液晶の形成を試みる。偏光顕微鏡で液晶状態を確認するとともに、XRD, SAXSなどのX線を用いた回折装置で構造の同定を行う。現在、カルボキシPOSSではC18のイミダゾリウム塩を用いた場合、層間距離4.1 nmのスメクチック層の形成が確認されている。本研究ではこれまでのPOSSが有する側鎖よりも距離が短いことから、より相関距離の短い領域に回折ピークが得られると予想している。さらに、熱重量分析、示差走査熱量測定を行い、熱物性の評価を行う。本テーマでは融点の上昇を抑えることが課題となる。イミダゾリウム塩上のアルキル鎖がC6からC10は最も低融点化が期待される領域であることから、液晶形成を鑑みながらアルキル鎖長の調節を行う。 B. 熱物性評価とフィラー効果の検証 市販のイオン液体に本テーマで得られた分子を添加し、融点と熱分解温度の測定を行う。融解においては熱力学的パラメータを算出し、添加剤の効果を調べる。また、核を持たない腕のみの構造の分子を添加することで、立体核の効果を調べる。現在、カルボン酸POSSのイオン液体において、市販のイオン液体の融点を30 °C低下させることを達成している。より少量で効果の高い分子を探索していくことで、従来イオン液体にならない分子を液体化する物質を開発する。
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