研究課題/領域番号 |
25620164
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
荻 崇 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30508809)
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研究分担者 |
奥山 喜久夫 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授 (00101197)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レアアースフリー蛍光体 / 有機無機ハイブリットプロセス / 酸窒化物 / 白色LED / 機能性微粒子 |
研究概要 |
平成25年度は固相法による白色発光蛍光体の合成と特性評価について検討した。具体的には、以下の研究内容を実施した。Al 系原料(水酸化アルミニウム)をBCNO 蛍光体合成プロセスへ添加することで、単一の材料で白色発光する蛍光体AlBCNOを合成し、各種操作条件(Al 原料の種類、添加量、ポリマーの種類、反応温度、反応時間、雰囲気)が発光ピーク、強度、量子効率、結晶性、バンドギャップ、組成、表面構造に及ぼす影響を実験的に検討した。合成した蛍光体の発光特性はPL、量子効率と吸収率は、量子効率測定装置、バンドギャップは、吸光光度計により分析した。なお、蛍光体粒子の結晶構造はXRDとTEM、形態はSEM、内部組成は、TEM-EELS、電子構造は、軟X線吸収分光装置(XAFS)、表面分析はFT-IRにより分析した。XRD測定結果より合成された粒子はB2O3、Al5BO9、Al3O3NおよびBNの混晶系であることが確認された。また、SEM写真より合成した白色蛍光体は板状または膜状中に粒子が複合化された構造であると明らかとなった。TEM-EELS解析より、膜状部分はB、CとNを多く含み、粒状部分はAlとOを多く含むことがわかった。合成粒子の発光スペクトルはBCNO蛍光体とAlCNO蛍光体のスペクトルを積算した波形で、370から570nmの広い可視光領域をカバーした半値幅がかなり広い蛍光体であることがわかった。さらに、CIE色度座標において、合成粒子の発光色は青色と黄色の間にあり、白色発光していることが確認された。これらの結果より、BCNO蛍光体の原料と水酸化アルミニウムを組み合わせることで白色に発光する新規蛍光体AlBCNOの開発に成功した。この白色蛍光体はワンステッププロセスで合成でき、レアアースを使用しない安価な蛍光体という特長を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al 系原料(水酸化アルミニウム)をBCNO 蛍光体合成プロセスへ添加することで、単一の材料で白色発光する蛍光体AlBCNOを合成し、操作条件が発光ピークに及ぼす影響を評価できた点で当初の計画通り、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は高度分析技術による白色発光蛍光体の発光機構の解明について検討する。具体的には、以下の研究内容を実施する。 1)大型放射光施設(SPring8)の軟X線吸収分光測定(XAFS)などによる蛍光体の電子状態の解析をはじめとする各種物性情報から、原子構造および結晶構造のモデルを立てる。蓄積した各種条件下での蛍光体の物理的、化学的物性と発光特性の相関性を総合的に分析し発光機構を明らかにする。 2)BCNO蛍光体の末端基によるPL 効率への影響(末端基の分子振動によるPL 効率低下)を検証するため、末端官能基の分子振動抑制が可能な極低温下(約-260℃、約3 時間)でのPL 測定を行い、試料の熱収縮・膨張による測定場所の確認とPL 強度のヒステリシスや蛍光体のレーザーによる劣化などを確認する。また合成した蛍光体を高温下にして、発光特性を測定することにより、発光機構が欠陥由来でないかどうかを検証する。また、蛍光寿命を調査する。 3)発光の素性を探る手法として有効なストリークカメラを用いた波長ごとの蛍光寿命の評価(依頼分析)についても実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年度に実施する実験(合成装置の作製)と分析に使用する必要が生じたため。 2014年度に実施する実験(合成装置の作製)と分析に使用する。 具体的には、蛍光体粒子を合成するための水熱合成装置の改良を行うための材料費として使用する。また2014年度に実施予定となった発光特性分析のための材料費などに使用する。
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