【研究の目的】有機/金属ハイブリッドポリマーは、鉄などの金属イオンとビス(ターピリジン)などの有機配位子の錯形成によって得られる一次元鎖状超分子ポリマーであり、イオン相互作用に基づいてDNA鎖と強く結合することを明らかにしている(Phys. Chem. Chem. Phys. 2011)。また、肺線がん細胞に対して抗がん作用を示すことを予備的に確認している。本研究では、従来にない抗がん剤の創成を目指し、(1)有機/金属ハイブリッドポリマーとDNA鎖の相互作用の解明、及び(2)有機/金属ハイブリッドポリマーの抗がん作用の解明を行う。
【平成26年度(最終年度)の研究成果】ポリマー鎖長の異なる有機/金属ハイブリッドポリマー(オリゴマー)に関して、がん細胞に対する細胞毒性試験を行い、ポリマー鎖長と抗がん特性の相関関係を明らかにした。得られた知見と、昨年度明らかにしたポリマー鎖長とDNAの相互作用との相関関係を比較したところ、興味深いことに、DNAに対して強く相互作用する有機/金属ハイブリッドポリマーが、高い抗がん特性示すことが判明した。
【研究期間全体(平成25年度~26年度)を通じた研究成果】上記成果に加え、平成25年度には次の成果を得た。異なる金属種や配位子を有する有機/金属ハイブリッドポリマーとDNAの相互作用を定量的に議論するために、紫外可視吸収スペクトル測定を用いた滴定実験により会合定数を算出し、比較した。また、混合する金属イオンと有機配位子のモル比を変えることで、ポリマー鎖長の異なる有機/金属ハイブリッドポリマー(オリゴマー)を合成し、得られたオリゴマーとDNAと相互作用に関して、同様の手法により会合定数を求めた。その結果から、ポリマー鎖長と相互作用の相関を明らかにした。
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