研究実績の概要 |
本研究の狙いは、世界初の有機応力発光センサを創出することである。応力発光体は【弾性変形程度の力学刺激に応じて繰り返し発光するセラミック無機粒子】と定義されている。有機応力発光体実現の方法は、高輝度無機応力発光体の発光原理を抽出し、有機材料に転写することである。即ち、 ①“準安定状態にトラップされたキャリアの力学刺激による解放と再結合による発光” 、 ②“圧電性を介して発生する局所電場による電界発光” を有機材料を用いて実現する事である。実現に向けて、有機分子を使った構成する機能要素・コンポーネント・空間の設計)、繰り返し性・視認性・定量性(ひずみ―発光強度・色)の観点からの応力発光評価が全体の基本計画である。平成27年度では、その計画に従い下記の成果を挙げた。 【分子圧電場での電界発光による応力発光の創出】:これまでにスクリーニングを行った基本圧電場構造である、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)-疎水性粘土ナノシートに関して、各種EL性発光色素(Alq3, CBP, DCM等)を賦活し、各種性能評価を行った。各種ドーパント賦活の結果、圧電性を示すβ体の分子配向形成(X線構造解析)、印加圧力に応じた圧電性能の発現(d33計測等)に成功した。また蛍光特性評価の結果、ナノクレイにより制御された空間において、発光状態を保持する事に成功した。一方、視認可能な高輝度応力発光には現時点では至っていない。有機n型半導体Poly(2,5-di(3,7-dimethyloctyloxy)cyanoterephthalylidene)を賦活し、高輝度応力発光体作製の指針・キャリア濃度向上を図ったが、同様の結果であった。高効率圧電場の形成、配向場であるクレイ周辺へ配置、PVDF鎖修飾による応力伝搬効率向上が必要と考えている。
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