研究課題
挑戦的萌芽研究
絹とポリウレタン(宇部興産(株)のセグメント化ポリウレタン、ならびに日華化学(株)の水分散ポリカーボネート系ポリウレタン(商品名:ネオステッカー))の複合化は、共通の溶媒としてヘキサフロロイソプロパノール(HFIP)を用いることで可能となった。複合化された絹―ポリウレタンの表面形態観察を走査電子顕微鏡を用いて行うとともに、引っ張り試験、透水試験等の物性試験、ならびにIRや13C CP/MASNMRを用いた詳細なキャラクタリゼーションを行った。さらに、絹とこれらのポリウレタンの2:1(重量比)混合物から成るスポンジをラット皮下4か所に埋植、200日後に取り出した所、十分に分解されるとともに毒性はないことが分かった。従って、これらの絹ーポリウレタン複合材料は、共通溶媒のHFIPとともに、次年度用の医療用パッチ材として、十分に使用できることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初、細胞毒性試験や生分解性試験のin vitro実験を計画したが、ラットへのin vivo移植実験を絹―ポリウレタン複合材料のスポンジについて行った結果によって、十分に、その実験目的を達成することができた。すなわち、作製した絹―ポリウレタン複合化材料は、毒性がないことを確認するとともに、ある期間で適度に分解させることができた。従って、この複合材料を次年度以降用いることとした。物性も良好であることが示された。次年度は、エレクトロスピニングによる絹ーポリウレタン複合材料の不織布作製実験が予定されている。そのため、絹とポリウレタンの共通溶媒を探す必要があったが、HFIPを使用すれば良いことがわかった。
HFIPを使用することによって、絹―ポリウレタンの複合化材料を作製出来ることが分かったので、エレクトロスピニングの手法を用いて、不織布の作製実験に取り掛かる。その作製条件を変えて得られた試作品について、物性試験を行い条件を特定する。その際、細胞の遊走性を向上させることにも留意する。できれば、作製された、絹―ポリウレタンの複合化材料の不織布を用いて、イヌについて移植評価試験を行う。
細胞毒性試験や生分解性試験のin vitro実験を計画したが、ラットへのin vivo移植実験(農工大の獣医学科で飼育されたラットを使用)を絹―ポリウレタン複合材料のスポンジについて行った結果によって、十分に、その実験目的を達成することができた。従って、ハムスター由来細胞版溶液等の培養基材やプロテアーゼXIVを購入する必要がなくなったので、その費用や実施のための研究補助費も出費しなくて済んだ。さらに、それ以外に、農工大で、全ての実験を行うことができたので、福井や群馬に出張する必要もなくなった(旅費も必要なくなった)。以上のように、最小限の費用で成果を出すことができたので、次年度に繰り越すこととなった。今年度使用しなかった分については、当初の研究計画にはなかった動物移植評価実験を行うための費用として計上する。すなわち、本絹基盤医療用パッチの開発は、研究計画書の4ページに記載の通り、挑戦的萌芽研究が終了した平成27年度以降、すみやかに動物移植評価実験に移行する予定であった。しかしながら、今年度の費用が、次年度以降に使用できるようになったので、本研究計画中に、絹―ポリウレタンの複合化材料の不織布を用いて新たにイヌを使った移植評価実験を行うことを計画、エレクトロスピニングの手法を用いて不織布の作製実験を行う非常勤研究員の賃金および消耗品等の費用とする。
すべて 2013 その他
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