研究課題/領域番号 |
25620169
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
朝倉 哲郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30139208)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高分子材料 / 医療用パッチ / 絹 / ポリウレタン |
研究実績の概要 |
高機能化絹のTG絹での生産については、順調に研究成果が得られた。すなわち、群馬県蚕糸技術センターにおいて、以前の共同研究のプロジェクトで実用化が終了していたTG絹生産用の家蚕の卵を用いてTG絹を生産した。フィブロネクチンの細胞接着部位、(RDG)8、ならびにラミニン野細胞接着部位、(YIDSR)そして内皮細胞増殖因子、(VEGF)を、各々、導入した3種類のTG絹を、500 g以上、順調に生産することができ、それを次年度実験用に用いることとした。 一方、研究代表者の研究室に設置されたカトテック(株)のエレクトロスピニング装置を用いて、家蚕絹繊維をスポンジ状に加工するとともに、ヘキサフロロイソプロパノール(HFIP)の共通溶媒を用いることによって、ポリウレタン(PU)と複合化された医療用パッチ材の不織布を作製することができた。ただし、得られる不織布の各種物性は、必ずしも十分でなく、優れた物性を有する不織布を生産するためには、その共通溶媒や溶解条件に関する、より詳細な検討が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィブロネクチンの細胞接着部位、(RDG)8、ならびにラミニン野細胞接着部位、(YIDSR)そして内皮細胞増殖因子、(VEGF)を、各々、導入した3種類のTG絹を、500 g以上、順調に生産することができたことは、予想以上の成果であった。またHFIPの共通溶媒を用いることによって、ポリウレタン(PU)と複合化された医療用パッチ材の不織布を作製することができた点も順調であった。しかしながら、優れた物性を得るためには、より検討が必要であった。平均すると、おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
エレクトロスピニング装置を用いて、優れた物性を有する絹とPUとの不織布を得るために、材料のエレクトロスピニングの分野で第一人者である滋賀県立大学の山下先生との共同研究を開始する。エレクトロスピニングの際の各条件を慎重に精査し、本プロジェクトを遂行する。得られた医療用パッチ材の不織布について詳細な物性データを得る。そして、ラットやイヌを用いた移植評価実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
絹とポリウレタン(PU)を共通溶媒に溶解、エレクトロスピニング(ES)によって不織布を作製する実験において、得られる不織布が、優れた物性を有するためには、その共通溶媒や溶解条件の詳細な検討が必要であることが分かった。 そのため、急遽、溶解性実験用の装置を購入することとし、物性実験等は来年度に繰越すこととした。詳細なESによる不織布の作製や物性評価の実験を、次年度に繰り越すので、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
絹とPUが相溶した材料から成る不織布の詳細な物性実験を行う前に、溶解性の基礎実験を行うこととした。そのため、各種溶媒の購入、生分解性や物性評価試験のための薬品や冶具の購入を行うとともに、溶解性の実験やエレクトロスピニングによる不織布の作製や物性評価等を行うため、非常勤研究員を雇用し、その賃金等に使用予定である。
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