研究概要 |
生体に優しいフレキシブルなデバイスの実現を目指して,フィルムの湾曲に伴う表面の膨張に対応できる伸縮可能な導電性材料やセンサーの開発が活発である。しかしながら,多くの場合数%の膨張歪みで破断してしまう。本研究では,高伸縮可能な物質デバイスを作るのではなく,これまで見過ごされていたフィルム基板の湾曲に伴う膨張収縮に着目する。湾曲しても表面が膨張しない歪みゼロフィルムを設計・創製することにより,幅広い高性能物質をフレキシブルエレクトロニクスへ適用可能となり,研究分野進展に大きく貢献できる。さらに,材料の柔らかさや伸縮を三次元的に精密制御できる材料の創製が実現し,他分野への波及効果も大きい。 平成25年度は既存のフレキシブル基板の歪み測定法を中心に検討した。様々なフレキシブル基板を作製し歪みを測定するため,表面グレーティングを有する極めて柔軟なラベルを作製しフレキシブル基板に貼り付けることにより,対象とするフレキシブル基板の歪み測定を確立した。 表面に深さ250 nmの凹凸構造を有するシリコン基板にスペーサーを介してガラス基板をのせガラスセルを作製した。シリコーンゴム(PDMS)の前駆体をこのセルに注入した後,加熱して無色透明かつ柔軟なPDMSフィルムを得た。このフィルムを既存のフレキシブル基板に貼り付けたのち光学系に設置して,プローブレーザー光を入射すると回折光がスクリーン上に現れた。湾曲に伴うこの回折角度変化からフレキシブル基板表面上の格子周期変化すなわち歪みを評価できる。ここで,湾曲前の格子周期と元のシリコン基板の周期が良く一致することを確かめ,歪み解析の精度について確認した。PDMSフィルムの膜厚と格子周期とを変えてフィルムの湾曲に伴う表面ひずみを定量できた。
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