研究実績の概要 |
生体に優しいフレキシブルなデバイスの実現を目指して,フィルムの湾曲に伴う表面の膨張に対応できる伸縮可能な導電性材料やセンサーの開発が活発である。しかしながら,多くの場合数%の膨張歪みで破断してしまう。 本研究では,高伸縮可能な物質デバイスを作るのではなく,これまで見過ごされていたフィルム基板の湾曲に伴う膨張収縮に着目する。湾曲しても表面が膨張しない歪みゼロフィルムを設計・創製することにより,幅広い高性能物質をフレキシブルエレクトロニクスへ適用可能となり,研究分野進展に大きく貢献できる。さらに,材料の柔らかさや伸縮を三次元的に精密制御できる材料の創製が実現し,他分野への波及効果も大きい。 本年度はPDMSの積層フィルムを調製し,曲げに伴う表面歪みを解析した。波長633 nmのヘリウムネオンレーザー光を自動精密ステージ上に搭載した試料フォルダーに設置したフィルムに入射した。フィルム表面に記録したグレーティング光からの透過光および回折光をスクリーン上に投影し,CCDカメラで距離を解析し,回折角を見積もることにより,回折角から表面の周期を評価した。単層フィルムの曲げによる表面歪みでは,中立面が中心部に存在する対照的な表面歪みが観測されたのに対して,硬さの異なる二層のPDMSフィルムでは,表面収縮と表面膨張は非対称となり中立面が中央からシフトすることが明らかとなった。外側に硬い層を積層したPDMSフィルムでは,単層に比べて曲げによる膨張を抑制できることがわかった。
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