平成26年度は、初年度に重点的に取り組んだ感温性高分子ポリイソプロピルアクリルアミド(pNIPAm)の臨界挙動の検討について、小角・広角X線散乱法とマイクロ波・ミリ波誘電分光のデータの相関解析をさらに精緻に進め、小角中性子散乱法(SANS)によるパイオニア研究でも明らかになっていなかった溶媒の違い(水と重水)によるpNIPAmの臨界挙動の違いや網目サイズの発散に伴う高分子鎖間のミクロな相関に関する定量情報を得ることが出来た。相関長と前方散乱強度の発散挙動の差異から、重水中の方が相転移温度が1度近く高く、pNIPAm側鎖間の疎水性相互作用が重水中の方が水中より弱いことが分かる。しかし、臨界べき指数にはデータの精度から読み取れるほどの差異は観測されなかった。さらに膨潤時の直径が200nm程度のpNIPAmゲル微粒子や臨界温度の異なる他の感温性高分子と共重合させたゲル微粒子の臨界挙動について精密な合成を行い、比較検討を行ったが、前者については、ミクロ空間に制限されたゲルにおいて、バルクゲルとは質的に異なる臨界挙動が起こっている可能性を示唆する興味深い結果を得た。これを理解するために、フラクタル性や自己アフィン性、様々な臨界挙動モデルや次元について理論的側面から解析と検討を鋭意進めている。また、共重合粒子についても、既往のSANS研究で明らかにされていなかった相関長などの発散現象を明確に観測したが、臨界温度は2つではなく、1つになる。前方散乱強度の臨界べき指数の振る舞いには、共重合体中での2成分の不均一性が影響していると推測される。
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