研究課題/領域番号 |
25620174
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大野 工司 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00335217)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 高分子構造・物性 / ナノ材料 / 表面・界面物性 |
研究概要 |
ディスク状の粒子は、2次元の異方性を有することから従来の球状粒子やロッド状粒子を用いた複合微粒子では発現しない多彩な高次構造を生じると予想され大変興味深い。本年度は、ディスク状粒子を調製しポリマーブラシの付与を行った。粒径4.4µmの単分散polystyrene微粒子(PSP)、純水、polyacrylic acid、THFをスクリュー管に入れ、一晩振とうした。この溶液を撹拌子を用いて2日間撹拌することで、ディスク状PSPの合成したた。次に、水に分散させたディスク状PSP、アンモニア、KCl 、PVPエタノール溶液を加え撹拌し、さらに、TEOSと蛍光分子担持シランカップリング剤のエタノール溶液を30分かけて滴下することで、ゾル-ゲル法によりPSP表面をシリカで被覆した。それをATRPの開始能を有するシランカップリング剤(BPE)で処理することにより、ディスク状PSP表面に開始基を固定化した。表面開始ATRPによるPEGMAの重合は、ethyl 2-bromoisobutyrate、Cu(I)Br、2,2-bipyridine、エタノールを用い、開始基固定化ディスク状PSPを加えて50度で24時間行った。2日間撹拌後のPSPをSEMで観察した結果、直径約6.5µm、厚さ約1µmの単分散かつ非常に形状の整ったディスク状PSPが確認された。ゾル-ゲル法を行う際に、KCl、PVPを添加することで、二次微粒子の発生を抑え、ディスク状PSP上にシリカを被覆することに成功した。重合後の溶液のGPC測定の結果から遊離ポリマーについて、PMMA 換算でMn=161000、Mw/Mn=1.74であることを確認した。また、重合後の粒子をIR測定した結果、PEGMAのC=O伸縮振動由来のピークが観測されたことから、ディスク状PSPにpoly(PEGMA)ブラシを導入出来たと結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極めて分散性に優れた単分散ディスク状ポリスチレン粒子を合成するルートを確立できたことはたいへん意義深い。さらに、その表面をシリカ層で被覆することに成功し、今後様々な分子で修飾することができるようになったことは研究の幅を拡げる。また、ポリマーブラシの付与にも成功しており、研究は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、ポリマーブラシ付与ディスク状複合微粒子の高次構造制御に取り組んでいく。秩序配列構造を各種顕微鏡を用いて観察する予定をしているが、現有の複合微粒子では粒径の大きな中実粒子であるため、光学顕微鏡観察では粒子による光散乱の影響を大きく受け、精度良く観察できないことが予想される。そのため、中空のディスク状粒子を合成することが必要になるかもしれない。また、より精密に構造解析するために、蛍光色素を複合微粒子に導入することも考える必要がある。さらに、コアとなるポリスチレン粒子の粒径を小さくすることも考える。粒径を小さくすることによる、ディスク時の影響を懸念しているが反応条件を最適化することにより十分に対応しうると判断している。中空粒子を用いる場合は、粒子の機械的強度を担保する必要がある。シリカから成る中空粒子を合成することを計画しており、シリカ層の厚みを制御する技術が必要になる。これにより、異方性の担保しつつ、機械的強度に優れた中空のディスク状粒子を合成するルートを確立していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までは自作のポリスチレン粒子を使用しており、高額な市販ポリスチレン粒子の購入を次年度にしたため。 また、より充実した内容の研究発表を行うため、学会発表を次年度に変更したため。 試薬、ガラス器具などの消耗品費および学会出席のための旅費が次年度は増えることになるため、予算を問題なく執行できる。
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