研究実績の概要 |
本課題では、気相酸化重合によるπ共役高分子/ラジカルポリマー複合層の形成と電荷貯蔵材料としての展開を目的とした。昨年度までにp型レドックス能を示すニトロキシドラジカルポリマーと化学酸化剤(p-トルエンスルホン酸鉄(III))を予め混合し酸化体のオキソアンモニウム塩とすることで、ラジカル機構によるチオフェンの重合阻害を回避し、高分子化できることを明らかにしている。本年度は、(1)気相重合PEDOTの異方導電性評価、および(2)レドックスポリマーと気相重合ポリマーの酸化還元準位のマッチングについて検討した。 (1) 気相重合PEDOT固相膜の異方導電性 気相重合PEDOTをくし形電極および二電極で挟んだ単層素子を用いて水平および垂直方向の導電率を評価したところ、水平方向の導電率は垂直方向よりも3-4桁高い異方導電性を示した。また市販PEDOT/PSSと比べ水平・垂直いずれも3桁高い導電率で、πスタックし水平方向に形成されるPEDOTドメインが低分子ドーマントのOTsを介して積層した構造をとることで高分子ドーマントPSSよりも阻害が小さいことに由来すると考えた。 (2) n型レドックスポリマーとの準位調節 負極活物質として卑な酸化還元準位を持つn型レドックスポリマー(ポリガルビノキシスチレン、ポリビオロゲン等)を供する際、複合化した気相重合ポリマーの脱ドープによる導電性の低下が懸念される。各n型ポリマーの準位に合わせ電位窓を調節したπ共役高分子を選択することが重要である。本項目ではポリビオロゲンに合わせポリ(3,5-エチレンジオキシピロール)(PEDOP)を選択し導電経路と電荷貯蔵能をあわせ持つ負極活物質として全有機二次電池へと展開した。
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