本研究では、革新型薄膜電池の電極として12CaO・7Al2O3(C12A7)を使用し、固体電解質とLi金属から成る全固体型電池の可能性を探索することを目的として、C12A7のナノ構造制御とその性質を調査し、イオン導電性の高い固体電解質を作製することを目指した。C12A7の作製方法としては、室温付近で結晶質のナノ粒子が合成可能な液中プラズマ法を検討した。その結果、前駆体の分子設計によりC12A7粒子を合成することが可能となった。また、液中プラズマ条件を検討することにより、合成したC12A7粒子の結晶構造が変化することも明らかとなった。すなわち、これまでに報告されている値とは異なる大きな格子定数をもつC12A7ナノ粒子を合成できる条件があることを見出した。さらに、新規なC12A7ナノ粒子は水素気流中での熱処理で効率的に合成できることを明らかにした。かごの中に入っているイオン種については、まだ明らかとなっていないが、通常よりも大きな格子定数であることから水素分子や当初の目的であったLi-O-イオンなどが入る可能性があると推測される。 今後は、合成した新規C12A7ナノ粒子の特性(結晶中のかご構造に意図的に望むイオン種を包接させる)制御を進める必要がある。 一方で、本研究では良質な固体電解質を開発することも試みた。選択した固体電解質は、Li7La3Zr2O12(LLZO)である。これは、LLZOがこれまでに報告されている固体電解質の中で最も高いイオン導電性を示しているからである。合成方法としてはゾルゲル法を選択肢、前駆体の分子設計を試みた。その結果、部分加水分解法を用いた前駆体から700℃というこれまでで最も低い温度で、アルミニウムなどをドープすることなく立方晶のLLZOナノ粒子を合成することに成功した。 今後は、この優れた粉体からの固体電解質を用いた薄膜電池への展開が期待される。
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