研究課題/領域番号 |
25620189
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田中 優実 東京理科大学, 工学部, 准教授 (00436619)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炭酸アパタイト / 固体電解質 / 酸化物イオン伝導体 / 固体酸化物型燃料電池 / 骨 |
研究概要 |
骨や歯の主成分として知られるB型炭酸アパタイト(B-CA)は、水酸アパタイトのリン酸イオンの一部が炭酸イオンに置き換わった化合物である。最近申請者らは、炭酸量を6wt%超まで増やしたB-CAが、酸化物イオンの移動に起因すると思われる10-5~10-3 Scm-1レベル(500~800 ℃)のイオン伝導を示すことを見出した。これは、生体物質を起源とする、希少元素や有害元素を一切含まない新型固体電解質の提供につながる重要な発見である。そこで本研究では、B-CAからの炭酸イオン引き抜きに伴う局所欠陥や歪みの導入と、B-CAへの異種元素ドープによる骨格構造安定化という両面から、キャリア密度とモビリティーの増大ならびにイオン伝導特性の安定化をはかることで、固体酸化物型燃料電池への実装に耐えるB-CA系固体電解質の開発につなげることを目指した。本年度は主に、B-CAからの炭酸イオンの引き抜きが導電率に与える影響について検討を行った。結果、炭酸イオンを約14 wt%含むB-CA粉末を、大気中、600 ℃で3時間熱処理したのちにディスク状に成型し、大気中、800 ℃で2時間焼結処理することで、炭酸イオンの含有量が約8 wt%まで減少した脱炭酸B-CA焼結体を作製することに成功した。得られた脱炭酸B-CA焼結体の導電率を測定したところ、脱炭酸処理を行っていないB-CA焼結体と比較して約10倍高い導電率を示すことが分かり、B-CAからの炭酸イオンの引き抜きが、B-CAの導電率向上に寄与することが示された。脱炭酸処理によって炭酸イオンが二酸化炭素として脱離することで、アパタイト構造内に酸化物イオンと酸化物イオン欠陥が同時に生成し、キャリア密度とモビリティーが増大したことで導電率が向上したものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度における目標は、B-CAからの炭酸イオンの引き抜きが導電率に与える影響を明らかにすることである。 現時点で、1)炭酸含育量2~20wt%のNa含有B-CAを対象とした、大気中の等速加熱下における脱炭酸挙動に関する検証、2)アパタイト骨格を維持する範囲で最大限に炭酸イオンを引き抜いたB-CA焼結体の作製および3)脱炭酸処理がB-CAの結晶構造と導電率に与える影響に関する系統的な評価と解析を終えており、B-CAからの炭酸イオンの引き抜きがB-CAの導電率向上に寄与することを確認するとともに、導電率向上のメカニズムに関する知見を得ている。したがって、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の評価を進めてゆく計画である。 1) B-CAの局所構造/骨格構造に及ぼすドーピング効果の検証 Na含有B-CAにおける、カルシウムイオンサイトと水酸化物イオンサイトに対して湿式法を利用した異種イオンドーピンクを行うことで、骨格構造安定性、ならびにイオン伝導特性におよぼすドーパン卜種とドーピング率の影響を評価する。カルシウムイオンサイトのドーパン卜の候補は、マンガン(II)イオン、チタン(II)イオンおよび(原子半径の影響を評価するためのモデルとして)各種希土類イオンであり、水酸化物イオンサイトの候補は、フッ化物イオンおよび酸化物イオンである。 2) 脱炭酸B-CA 系電解質を用いた燃料電池特性評価 Na含有B-CA およびその脱炭酸体を電解質とする単セルSOFCの発電特性を評価、解析することで、実用化の可能性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
勤務先変更に伴う設備環境の変化により、燃料電池評価用のガスラインシステムの設計加工のために計上していた物品費ならびに委託加工費(その他費用)の使用状況が当初の予定とは異なってしまったことがもっとも大きな理由である。 初年度に予定通り進めることの出来なかった燃料電池評価用のガスラインシステムの拡充のために使用する予定である。
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